胚盤胞移植とは不妊治療の一環で、受精卵が細胞分裂を始めたあと、胚盤胞まで培養してから、子宮内に移植する方法です。質の高い胚盤胞まで培養することで、高い妊娠率が期待できます。
しかし、胚盤胞移植について回る問題として、胚盤胞収縮が挙げられます。「妊娠率にかかわってくるのではないか」「凍結してしまったら、せっかく育った胚盤胞を無駄にしてしまうのではないか」と心配になる方もいるかもしれません。
今回は、胚盤胞が収縮してしまう原因や移植への影響、妊娠率との関係性などについてくわしく解説します。
胚盤胞収縮とは？
胚盤胞収縮とは、一般的に胚盤胞が黒っぽく小さくなっている様子をさします。
従来の体外受精ー胚移植では、胚を排卵後2～3日目に子宮内に戻す方法がおこなわれていました。しかし、良好な胚を子宮内に戻しても着床しない人の中には、子宮の環境が悪く、胚がうまく育たないと考えられるケースがあります。
また、排卵後2～3日目の初期分割期の胚は、どんなによい胚でも後半になって発育が止まってしまうものがあるため、妊娠にいたっていないと考えられるケースもみられます。
このようなケースでは、胚を胚盤胞まで培養してからの移植や、凍結保存して子宮内膜の状態をよくしてからの移植が選択されるのです。
良質な受精卵が胚盤胞まで育つ確率は約50%といわれているため、胚盤胞が収縮しているのを見て「十分に成熟していないのではないか」「移植しても妊娠できないのではないか」と不安になる方も多いでしょう。
ただし、胚盤胞収縮の多くは、胚盤胞が発育するための過程か、凍結胚を移植のために融解するときに起こるものです。
ここからは、胚盤胞収縮の時間間隔や、胚盤収縮が問題となるケースについて解説します。
出典：胚盤胞移植法とは｜新百合ヶ丘総合病院産婦人科リプロダクションセンター
胚盤胞の収縮と拡張の時間間隔
胚盤胞は生育していく過程で、収縮と拡張をくり返します。そして、収縮と拡張によって生まれたエネルギーで、透明帯を破って中の細胞が出てくる「孵化（ハッチング）」と呼ばれる状態になります。この細胞が子宮内膜にくっつくことで、妊娠が成立するのです。
胚盤胞の収縮や拡張の時間には個人差はありますが、通常は受精後5～6日で自然にハッチングするものです。もし胚盤胞だけでの力ではハッチングできない場合は、レーザーを用いて穴をあける方法がおこなわれます。
胚盤胞を凍結する場合は、胚の細胞を壊さないために中の水分を抜いて収縮させます。融解の際は徐々に水分を戻していく必要があるため、拡張まで3時間程度かかることが多いです。
胚盤胞の収縮と拡張の回数
胚盤胞の収縮と拡張の回数が多いと、凍結融解胚の着床能が低下するとされています。そのため、胚盤胞を選択する指標の1つとして、凍結前の胚盤胞が収縮しているかどうかを確認するのは有用だと考えられるでしょう。
出典：凍結前の胞胚腔収縮の確認は胚盤胞選択の評価因子となる｜日本IVF学会
胚盤胞収縮が問題になるケース
胚盤胞収縮が問題となるのは、収縮後もハッチングが起こらない場合と、培養後に拡張せずに回復が遅延している場合です。
ハッチングが起こらない場合は着床しにくく、妊娠率に影響をおよぼします。また、培養後に胚盤胞が拡張しない場合、最もグレードが高い胚盤胞よりも妊娠率が低いことが確認されています。
出典：回復培養後の胚盤胞Gradeによる妊娠率の比較｜日本IVF学会
胚盤胞収縮における着床率・妊娠率への影響
凍結融解後の移植時に収縮していた胚盤胞は、着床率や妊娠率が優位に低かったと報告されています。そのため、胚盤胞の状態を見極めて移植を決めるのが大切です。
胚盤胞は、発育にともなって胞胚腔（胚の内部に存在する細胞が内空間）の広がりが変化します。胞胚腔の大きさで発育の度合いを分類したものをガードナー分類と呼び、グレードによって着床率や妊娠率に差が生まれるのです。
ガードナー分類では、グレード1～グレード6まで分類され、グレードが高いほどよい胚盤胞と判断されます。グレードが高い胚盤胞は、染色体異常の頻度が低いため、着床率や妊娠率が高いのです。
胚盤胞のグレードについては、以下の記事でくわしく解説しているので、参考にしてください。
2023.12.28
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胚盤胞収縮が確認された場合の移植の可否
胚盤胞収縮が確認された場合、移植を進めても着床率や妊娠率が低くなりやすいため「移植しても大丈夫なのだろうか」と心配になるかもしれません。医師から「収縮していても問題ありません」と言われて、疑いを持ってしまう方もいるでしょう。
ここからは、収縮が確認できた胚盤胞の移植の可否について解説します。
収縮が確認された胚は移植できるか
収縮が確認された胚は、移植せずに破棄するのが一般的です。なぜならそのまま移植すると、化学流産を起こしたり、胎嚢が小さいまま発育しなかったりします。
商業的な理由で収縮胚を移植するケースも
小規模なクリニックのなかには、商業的な理由で収縮した胚盤胞を移植するケースもみられます。現在は、年齢によるものの、体外授精は6回まで保険が適用されます。しかし、6回を超えるまで収縮した胚盤胞を移植し、お金を稼ごうとするクリニックもあるのです。
そのまま移植した場合のリスク
前述のとおり、収縮が確認された胚盤胞をそのまま移植すると、化学流産を引き起こしたり、胎嚢が小さいまま発育せずに流産にいたることがあります。
化学流産とは、生化学的妊娠とも呼ばれ、尿中や血中にヒト絨毛性ゴナドトロピン（hCG）が一時的に検出されたあとに、超音波検査で胎囊を認めない状態のことです。妊娠検査薬では陽性を示します。
収縮した胚盤胞を移植すると、妊娠を継続できずに流産にいたる可能性が高いことを押さえておきましょう。また、グレードが低い胚盤胞を移植すると、ダウン症や染色体異常が起こる可能性が考えられます。
出典：
1．生化学的妊娠（Biochemical pregnancy）の扱い方｜日本産婦人科医会
The relationship between blastocyst morphology, chromosomal abnormality, and embryo gender｜National Library of Medicine
胚盤胞収縮を防ぐ方法
胚盤胞収縮を防ぎ、着床率や妊娠率を高めるためには、日々の生活の見直しから始めましょう。ここからは、よい胚盤胞を作るためにできることを紹介します。
生活環境の見直し
胚盤胞収縮を防ぐためには、生活環境の見直しをおこないましょう。寒いのに暖房をつけずに寝ることや、逆に寒さ対策で布団を重ねすぎたり厚着をして寝た結果、暑くなって途中で布団をはがしたまま朝を迎えるなどの状況は、体温調節がうまくいかず、身体が冷えてしまう可能性があります。
冷えによって、卵巣の血流が悪くなると、胚盤胞のもととなる卵子の発育や成熟が妨げられてしまいます。また、子宮や子宮周辺の血流が悪化すると、胚盤胞がうまく着床できない可能性もあるのです。
女性は21歳までは身体を冷やしても問題ないケースが多いですが、それ以上の年齢では身体を冷やさない生活環境を作らないと妊娠しにくくなり始めます。
出典：【漢方医監修】妊活を始めるならまず温活！温めるべきは「下半身」｜ロート製薬
生活習慣の改善
胚盤胞の収縮を防ぎ、グレードの高い胚盤胞を作るためには、生活習慣の改善も必要です。胚盤胞は、精子と卵子が受精することで生まれる受精卵が、細胞分裂を始めて育ったものです。そのため、精子や卵子の質を高める必要があります。
- 飲酒や喫煙を避ける
- 7時間～8時間の睡眠をとる
- 栄養バランスのとれた食事を摂取する
- ストレスを溜めない
- 適度な運動をおこなう
特に、喫煙者の受精卵の分裂は不均等で、スピードが遅くなることが報告されています。喫煙習慣がある方は、この機会に禁煙に取り組みましょう。
出典：妊娠する力「妊孕能」とは｜不妊治療について｜新百合ヶ丘総合病院産婦人科 リプロダクションセンター
漢方の服用
漢方の服用で、胚盤胞の収縮を防ぎ、着床率や妊娠率を高められる可能性があります。
- 温経湯（ウンケイトウ）
- 桂枝茯苓丸（ケイシブクリョウガン）
- 加味逍遙散（カミショウヨウサン）
これらの漢方には、血流をよくする効果があるため、卵子の質によい影響を与えるでしょう。
ただし、漢方は体質や症状に合わないものを服用すると、効果が得られないばかりか、体調を崩すおそれもあります。漢方の服用を検討する場合は、専門家の指示を仰ぐことをおすすめします。
出典：漢方薬みんなのギモン｜クラシエ
胚盤胞の収縮と凍結・融解後の回復
最後に、胚盤胞の収縮と凍結・融解後の回復の関係について解説します。
胚盤胞の凍結と収縮の関係
凍結前に胚盤胞の収縮回数が増えるほど、凍結融解胚の着床率は低下する可能性が示唆されています。そのため、凍結前に胚盤胞収縮の有無の確認はとても重要です。
出典：凍結前の胞胚腔収縮の確認は胚盤胞選択の評価因子となる｜日本IVF学会
胚盤胞の融解と収縮の関係
胚盤胞の融解後、収縮がみられることがありますが、胚の細胞を壊さないために、凍結の際に水分を抜くことが原因です。
融解の際は徐々に水分を戻していく必要があるため、拡張まで3時間程度かかるケースがあります。病院によっては、融解後2時間～3時間の時点で、再拡張の有無を確認してから、移植の可否を決めます。
融解後の胚盤胞の回復と成功率
融解後の胚盤胞の回復（再拡張）がみられない場合、生児出産の確率が低かったと報告されています。融解後にもグレード3まで回復した胚盤胞を移植することが望まれます。
出典：回復培養後の胚盤胞Gradeによる妊娠率の比較｜日本IVF学会
胚盤胞の質を向上させるのに漢方を取り入れる方法も
胚盤胞収縮は、着床率・妊娠率に影響を与えるため、多くの病院では移植を見送ります。多くの病院では移植を見送るのが一般的です。ただし、中には収縮した胚盤胞を商業目的で移植する悪質なクリニックも存在するため、慎重な判断が必要です。
実際に収縮した胚盤胞を移植した場合、化学流産や胎嚢の発育不良などのリスクが高まるといわれています。だからこそ、質の高い胚盤胞を育てること自体が、着床率や妊娠率を上げる重要なステップになります。
このような質の高い胚盤胞を目指すためには、身体を冷やさない工夫や、規則正しい生活、禁煙や節酒を心がけてください。また、胚盤胞の質を向上させるには、漢方を取り入れるのも効果的です。
実際に、北陸富山の「漢方薬房こうのとり」で6ヶ月間漢方を服用し、生活習慣を見直した方々の中には、「1回の採卵で胚盤胞が7個以上得られ、収縮しているものがないか、あっても1個のみだった」という結果を得られた方が複数いらっしゃいます。
これは、体質に合った漢方の力と生活改善の相乗効果により、胚盤胞の質が大きく向上したことを示しています。
ただし、体質や症状に合わない漢方を自己判断で服用すると、かえって体調を崩すおそれもあります。そのため、専門家のアドバイスを受けることが大切です。
北陸富山の「漢方薬房こうのとり」では、一人ひとりの体質や症状を丁寧にヒアリングし、その方に合った漢方の提案をおこなっています。胚盤胞の質を向上させて、体外受精を成功させたい方は、ぜひ一度お問い合わせください。
