月経不順や不妊の原因として、「無排卵月経」が挙げられます。無排卵月経は、生理は来るのに排卵がない状態をいいます。自覚症状がないこともあり、自分ではすぐに判断しづらい病気です。
そこで今回は、無排卵月経の特徴や治療方法、自分でできる改善方法について解説します。また、無排卵月経でも妊娠できるのか、そのような事例はあるのかをご紹介します。月経不順だけでなく不妊に悩んでいる方も参考にしてくださいね。
無排卵月経とは?
無排卵月経とは、月経のような出血があるのに排卵していない状態です。無排卵性周期症とも呼ばれます。
月経周期は卵胞期・排卵・黄体期・月経から成ります。ここで関係しているのが、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン (黄体ホルモン)という2種類のホルモンです。
通常、卵胞期にはエストロゲンが子宮内膜を厚くし、排卵の準備をします。排卵が起こると、プロゲステロンの分泌量が増えます。プロゲステロンの働きは、受精卵が着床しやすいように子宮内膜を整えることです。妊娠しなければ子宮内膜は外に排出され、月経が起こります。
何らかの原因で排卵が起こらないと、プロゲステロンの分泌は増加しません。その結果、厚くなった子宮内膜が維持できず、剥がれ落ちてしまいます。この出血が破綻出血です。
このように、無排卵月経は排卵していないにもかかわらず、通常の月経のように定期的な出血が起こります。
出典:
月経不順 | 一般社団法人日本女性心身医学会
意外と知らない女性ホルモンと月経の関係。周期がわかると痛みの対策に役立つ! | 大正製薬
無排卵月経の特徴
無排卵月経の特徴として、月経周期・月経日数・出血量に関する月経不順を伴います。とはいえ、月経自体は起こっているため、無排卵だということに気付かない場合もあります。
月経周期は、通常25~37日です。月経周期が24日以内の場合、排卵障害による無排卵出血の可能性があります。月経が頻回になると、貧血になる場合があるので注意が必要です。
さらに、排卵障害があるとプロゲステロンが不足します。その結果、骨形成・皮膚の代謝・記憶力が衰える可能性があります。
また、通常は基礎体温が低温期と高温期の二相性を示しますが、無排卵月経の場合は一相性になります。無排卵月経を疑ったら、まず基礎体温を測りましょう。
出典:月経異常・排卵障害 | 慶応義塾大学病院
無排卵月経の検査方法
無排卵月経の可能性がある場合、以下のような方法で検査をおこないます。
- 問診・内診
- 血液検査
- 超音波検査
問診では基礎体温を聞かれることがあります。基礎体温が一相性か二相性かで排卵の有無がわかるため、普段から測って記録をしておきましょう。
血液検査では月経周期の3~7日目および次回の生理日の約1週間前に採血をします。プロラクチンなどの各種ホルモンの値を計測することで、排卵障害の有無がわかります。
また、排卵障害の原因となる部位が脳(視床下部ー下垂体)なのか、あるいは卵巣なのか鑑別が可能です。
超音波検査では、腟内に親指ほどの太さの器具を挿入し、子宮内膜の状態や卵巣を観察します。通常の子宮内膜の厚さは排卵直前には10mmほどです。
また、卵巣の中では排卵できなかった卵胞を観察できます。
出典:不妊症関連検査 | 慶応義塾大学病院
無排卵月経は続く?
前述したとおり、月経周期の正常範囲は25~38日であるため、月経周期が39日を超える場合にはホルモン分泌が正常におこなわれていない可能性があります。このように周期が長い月経を「稀発月経」といいます。
2~3カ月稀発月経が続くようなら、婦人科を受診してホルモン分泌の検査をしてもらうのがベターです。日頃から基礎体温を測っておくことで、診断の参考にもなりますよ。
無排卵月経の原因として考えられること
無排卵月経の原因として、以下の事柄が挙げられます。
- 過度なストレス
- 過度なダイエット・拒食症
- 不規則な生活
- 喫煙
- 激しいスポーツ
- 抗うつ剤などの薬剤の服用
- 多嚢胞性卵巣症候群
- 高プロラクチン血症
過度なストレスやダイエットはホルモンバランスが乱れ、排卵障害につながります。食事を過剰に摂ってしまったり、反対に食事が食べられなかったりする場合は、婦人科だけでなく精神神経科の受診も必要になるでしょう。
また、うつ病に使われる抗うつ剤などの精神安定剤は、脳下垂体からのプロラクチン分泌を増加させ、排卵障害を引き起こすことがあります。抗うつ剤を服用している方は注意が必要です。
多嚢胞性卵巣症候群は、卵胞が十分に育たず、多くの⼩さな卵胞が卵巣内にとどまってしまう病気です。この場合は卵胞が育たないため、定期的な排卵が起こりません。多嚢胞性卵巣症候群は超音波検査や血液検査でわかります。
高プロラクチン血症も、無排卵月経の原因になり得ます。高プロラクチン血症は25~34歳の方に多い病気です。原因はストレスや睡眠不足、薬剤によるものなどさまざまです。高プロラクチン血症によって排卵障害が引き起こされ、不妊症につながる可能性もあります。
出典:
月経異常・排卵障害 | 慶応義塾大学病院
多嚢胞性卵巣症候群について | あすか製薬株式会社
女性の病気について | 一般社団法人日本女性心身医学会
無排卵月経の人に多い症状
無排卵月経は、自分で判断するのは難しい病気です。しかし、無排卵月経の人に多い症状と照らし合わせたりセルフチェックをしたりすることで、相談や受診の目安になります。
無排卵月経だと出血量や痛みの程度、周期にどのような変化があるのか確認しておきましょう。
無排卵月経の出血量は?
無排卵月経の場合、出血量は安定しないことが多いでしょう。「前回の出血量は多かったのに、今回は極端に少ない」「不正出血がある」など、出血量が一定でない場合は無排卵月経や、そのほかの病気の可能性があります。
出血量の違いだけで無排卵月経を判断することはできないため、早めに受診しましょう。
無排卵月経の生理痛は?
通常の月経でも無排卵月経でも、生理痛の有無や程度は人によって異なります。そのため、生理痛による無排卵月経の判断はできません。
無排卵月経の有無に限らず、「生理痛がいつもより重い」「痛みが続く」など不安に感じることがあれば、婦人科を受診してくださいね。
無排卵月経の周期・日数は?
無排卵月経の場合、月経周期は安定しないことが多いです。月経周期24日以内の「頻発月経」や39日を超える「稀発月経」が起こることがあります。
また、正常な月経日数は3~7日です。3日未満で出血が終わってしまったり、8日以上続いたりしたら、何らかの月経異常や排卵障害が起こっている可能性があります。
一方で、月経はストレスや体調・環境の変化によって安定しないこともあります。もし気になる症状があれば、基礎体温を測り、受診するようにしましょう。
参考:無排卵月経はセルフチェックできる?
無排卵月経は自覚症状がないため、自分で認識するのが難しい病気です。しかし、以下の項目についてセルフチェックをすることで、無排卵月経の可能性を確認できます。
- 基礎体温が低温期と高温期に分かれず一定
- 避妊していないのに妊娠しない
- 月経周期や出血量が安定しない
- 月経時以外に不正出血がある
当てはまる項目があれば、早めに薬局や病院で相談しましょう。
無排卵月経の治し方・治療方法
無排卵月経の可能性があるとわかったら、すぐに治療をしたいですよね。そこで、無排卵月経を自分で改善する方法や、受診した際の治療法について解説します。
生活習慣の改善
無排卵月経の原因として、過度なストレスやダイエットによるホルモンバランスの乱れが挙げられます。
そのため、生活習慣を見直し、改善することで自然と排卵が起こる可能性があります。十分な睡眠やバランスの良い食事、適度な運動などでホルモンバランスを整えましょう。
排卵誘発剤の使用
すぐに妊娠を望む場合は、早急な治療が必要です。その場合は、排卵誘発剤での治療が選択されるでしょう。よく使われる排卵誘発剤として、以下の2つが挙げられます。
- クロミフェン製剤
- ゴナドトロピン製剤
クロミフェン製剤は、軽度の排卵障害に使用される内服薬です。脳の下垂体に作用し間接的に卵巣を刺激することで排卵を促します。副作用が少なく、比較的使いやすい薬です。
ゴナドトロピン製剤は、卵巣に直接作用して排卵を誘発するタイプの注射薬です。その効果は強力で、多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群などの副作用の可能性があります。
出典:生殖医療Q&A よくあるご質問 | 一般社団法人日本生殖医学会
漢方薬の使用
排卵誘発剤の副作用が気になる人には、漢方薬を使用することもあります。無排卵月経には、漢方婦人薬である桂枝茯苓丸、加味逍遥散が多く用いられます。排卵誘発剤と併用することで、相乗効果も期待できますよ。
原因が脳(視床下部-下垂体)の異常だと想定される場合は、温経湯が選択されます。温経湯が視床下部に作用した結果、黄体形成ホルモン(LH)の分泌が促進し、排卵を促すことがわかっています。
また、無排卵月経の原因がストレスなどの精神的なものである場合には加味逍遥散、肥満症の場合は防風通聖散、食事が摂れない場合は人参湯類が使われるでしょう。また、高プロラクチン血症には芍薬甘草湯や温経湯が使用されます。
北陸富山の「漢方薬房こうのとり」では、婦人科疾患に対応できる漢方について、豊富な知識と実績があります。漢方について気になる方はぜひお役立てください。
2023.10.17
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出典:
漢方とは - 処方 - 産婦人科⑨排卵障害・無月経 | 日本臨床漢方医会
温経湯のLH-RH分泌促進作用 | CiNii
参考:無排卵月経は自然に治る?
無排卵月経は、ストレスやダイエットが原因で起こることがあります。そのため、ストレスを解消したり過度なダイエットをやめたりすることで、排卵する可能性があるでしょう。
しかし、無排卵月経を放置すると徐々に卵巣の機能が衰えてしまいます。その結果、妊娠したくてもできない可能性が高くなります。
さらに、卵巣機能が低下することで早期閉経や骨粗鬆症、子宮体癌のリスクも高まります。自然治癒を期待せず、早めに受診するのがよいでしょう。
無排卵月経でも妊娠できる?
妊娠は射精によって放出された精子と、卵巣で育った卵子が受精することで起こります。卵巣から卵子が飛び出す「排卵」は妊娠に必要な工程であり、無排卵の状態での妊娠は難しいでしょう。
無排卵月経で妊娠を望む場合、まずは無排卵月経の治療をおこなって月経が来るようにします。もしくは、排卵誘発剤を使って排卵を促すことで妊娠しやすくなるでしょう。
出典:
妊娠のために知っておきたい知識 | 東京都福祉局
一般不妊症関連Q&A | 札幌医科大学産婦人科
「無排卵月経だったけれど妊娠した」という事例はある?
ここまで無排卵月経について解説しましたが、実際に無排卵月経でも妊娠できるか不安ですよね。SNSで「無排卵月経だったが妊娠した」という方の声があるのでご紹介します。個人差はありますが、一例として参考にしてくださいね。
不妊治療しないと妊娠しにくいと言われたものの、漢方を服用することで妊娠した方の例です。
この方は、無排卵月経が続いていましたが自然妊娠したそうです。
さまざまな合併症がありましたが、妊娠した方の例です。
妊娠希望で無排卵月経の方は、漢方薬房「こうのとり」にご相談を◎
無排卵月経は、月経があるため自分では気付きにくい病気です。また、無排卵月経の症状である月経不順があっても、検査をしないと無排卵かどうかを見極めるのは困難です。
無排卵月経の放置は、不妊症の原因になります。妊娠を望む方は特に、早めの治療が必要です。
生活習慣を見直すことで無排卵月経が改善することもあります。しかし、無排卵月経を放置するとほかの病気につながることもあるため、自己判断での治療は危険です。
北陸富山の「漢方薬房こうのとり」は、妊娠を希望していて無排卵月経に悩んでいる方のご相談を受け付けています。妊活の専門家が知識や経験をもとに適切なアドバイスをします。
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