流産を経験した方や、妊活中で流産が心配な方は多いと思います。流産の原因としてあげられるのが染色体異常です。染色体異常による流産とはどのようなものなのか、気になりますよね。
そこで今回は、染色体異常の種類や原因、確率、流産を防止する方法などについて解説します。
染色体が正常にもかかわらず流産するケースや、染色体異常があっても流産しないケースについても説明しますので、ぜひ参考にしてくださいね。
染色体異常による流産とは?
流産は妊娠した方のおよそ15〜20%で起こるといわれています。流産の原因の約6割が「染色体異常」です。
人には約22,000個の遺伝子が存在します。遺伝子の組み合わせや働きによって、個人の性別や特徴、受精から発達まで、人のあらゆる現象が決まります。これらの遺伝子(DNA)の配列がコイル状に何重にも巻かれ、太くなった状態のものが染色体です。
人の染色体は人種にかかわらず、男性も女性も同じ数で決まった形をしています。通常46個の染色体で1セットで、22対の常染色体と2個の性染色体から成り立ちます。染色体異常は、これらの染色体の数が何らかの原因で多くなる、少なくなる、形が変わる、などの状態になったものです。
流産の原因となる染色体異常には以下のようなものがあります。
- トリソミー
- トリソミーは染色体の1つが過剰になったものです。流産では、常染色体(No.1からNo.22の染色体)のトリソミーが多く見られ、性染色体(XとY)のトリソミーは流産の原因にはなりません。
例えば、No.1染色体が過剰な場合は1トリソミー、No.22染色体が過剰な場合は22トリソミーと呼ばれます。流産で最も高頻度なのは16トリソミーです。
- トリソミーは染色体の1つが過剰になったものです。流産では、常染色体(No.1からNo.22の染色体)のトリソミーが多く見られ、性染色体(XとY)のトリソミーは流産の原因にはなりません。
- モノソミー
- モノソミーとは、2本の染色体のうち1本がない状態をいいます。常染色体では21モノソミーや22モノソミーがごく稀に見られ、ほかの染色体のモノソミーは流産の中には見られません。一方で、女性の性染色体であるXXのうち、1本が欠失した状態であるXモノソミーが、流産では高頻度で見られます。
Xモノソミーの大半は流産に終わってしまうでしょう。一方で、流産を免れて生まれた場合にはターナー症候群と呼ばれ、低身長や月経異常、特徴的身体兆候などの症状が現れることがあります。
- モノソミーとは、2本の染色体のうち1本がない状態をいいます。常染色体では21モノソミーや22モノソミーがごく稀に見られ、ほかの染色体のモノソミーは流産の中には見られません。一方で、女性の性染色体であるXXのうち、1本が欠失した状態であるXモノソミーが、流産では高頻度で見られます。
- 三倍体と四倍体
- 本来、精子と卵子はそれぞれ染色体を23個持っています。この、常染色体22個と性染色体1個の状態が一倍体です。受精によって精子と卵子が合体すると、受精卵は23+23、計46個の染色体を持つことになります。
しかし、まれに1個の卵子と2つの精子が合体してしまうことがあります。すると、受精卵の染色体の数は23+23+23で計69個です。これを三倍体といいます。
同様に1個の卵子と3個の精子が受精すると、染色体は23+23+23+23=92個の四倍体になります。流産で見られる染色体異常の約25%がこのような「倍数体」と呼ばれる異常です。三倍体や四倍体の受精卵は高頻度に生じますが、大半は流産になり出生するケースはほとんどないでしょう。
- 本来、精子と卵子はそれぞれ染色体を23個持っています。この、常染色体22個と性染色体1個の状態が一倍体です。受精によって精子と卵子が合体すると、受精卵は23+23、計46個の染色体を持つことになります。
- 染色体構造異常
- 染色体の構造の一部が変化した状態を染色体構造異常といいます。染色体構造異常では、染色体の一部の欠失、重複、転座(種類の異なる染色体間で染色体の一部が交換されていたり、染色体の一部または全部が別の染色体にくっついたりしている)など、正常な染色体とは異なる構造が見られます。
染色体異常による流産の原因として多いこと
一般的に、妊娠12週未満の流産を「早期流産」、妊娠12週以降22週未満の流産を「後期流産」といいます。妊娠12週未満の早い時期での流産が多く、流産全体の約90%を占めます。流産の原因の60%は、染色体異常によるものです。
また、稽留流産とは、胎児が死亡していても出血・腹痛などの症状がない状態をいいます。自覚症状がないため、医療機関の診察時に初めて確認されることが多いです。稽留流産も通常の流産と同じく、染色体異常が原因の場合が大半です。
本章では、染色体異常による流産の原因や、検査方法について解説します。
出典:
反復・習慣流産(いわゆる「不育症」)の相談対応マニュアル|日本周産期・新生児医学会
出産について|公益財団法人 母子衛生研究会
加齢
母体の年齢が高くなるにつれて、染色体異常を起こしやすいことがわかっています。卵巣内の卵子の数は出生時に決まっており、そこから増えることはありません。加齢に伴い卵子も老化し、染色体異常が増え、流産率が増加します。
特に35歳以上の高年齢の女性の場合、流産率が高くなります。現時点では卵子の老化を止める方法はありません。そのため、妊娠を希望する方や流産を繰り返す方は、出来るだけ早く次の妊娠に向けた準備をする必要があるでしょう。
出典:反復・習慣流産(いわゆる「不育症」)の相談対応マニュアル|日本周産期・新生児医学会
喫煙
喫煙が染色体異常を引き起こす可能性があります。特に男性において、喫煙によって精子の染色体異常が増加し、子どもができにくくなるという報告があります。妊娠を希望する場合は、喫煙は控えましょう。
出典:Smoking-induced chromosomal segregation anomalies identified by FISH analysis of sperm|Molecular Cytogenetics
染色体異常の検査
胎児染色体の検査をおこなうことで、染色体異常の有無を確認できます。出生前診断は非確定検査と確定検査に分けられます。
非確定検査は、母体血清マーカー(クアトロテスト)、コンバインド検査(超音波検査と血液検査を組み合わせて判断)、NIPT(無侵襲的出生前診断、母体血胎児染色体検査)などの検査で、染色体に異常があるかどうかを調べます。これらの非確定検査は胎児にとって安全な方法ですが、確定診断ではありません。もし非確定検査で陽性が確認された場合、診断を確定するためには確定検査をおこなう必要があります。
確定検査には、羊水検査と絨毛検査の2種類があります。羊水検査はお腹から子宮内に針を刺し、羊水を採取します。絨毛検査は将来胎盤になる部分から絨毛細胞を採取する方法です。
どちらの検査も胎児由来の細胞から、染色体の数や構造変化を確認できます。ただし、子宮の中の胎児がいるスペースに針を入れるため、破水・出血・子宮内感染・早産・羊水塞栓症・穿刺による母体障害(血管や腸管など)などの合併症が生じる可能性があります。検査によって流産が起こる確率は羊水検査では0.3%、絨毛検査では1%です。
出典:出生前診断について ― 血液検査で赤ちゃんの染色体異常がわかるNIPT ―|社会福祉法人恩賜財団 京都済生会病院
染色体異常の流産率について
流産の80%は妊娠12週までに起き、そのうち50〜70%に胎児の染色体異常が見られます。トリソミーやモノソミーのような数的異常を伴う場合には早い時期に流産になりやすく、75%は妊娠8週までに流産となります。一方で数的異常がない三倍体・四倍体や、遺伝子構造異常を伴う場合は、13週ごろに流産するケースが多いでしょう。
受精後3日目胚では、50%に染色体異常が見られ、それ以降は妊娠週数が進むにつれて染色体異常の割合が減少していきます。
また、流産した場合の染色体異常の60%は常染色体トリソミーです。特に16番染色体のトリソミーが多く見られます。
下記の表は、配偶子形成から出生までの染色体異常の頻度をわかりやすくまとめたものです。染色体異常の大半が、出生前に淘汰されてしまうことがわかりますね。
受精卵 | 30%(卵子20%+精子10%) |
3日目胚 | 50% |
第1三半期(妊娠0週〜13週) | 10% |
新生児 | 0.4% |
出典:
2.染色体異常|公益財団法人 日本産婦人科医会
Chromosome Abnormalities and Genetic Counselling|Cambridge University Press
染色体異常ありでも流産しないケース・染色体異常なしでも流産するケース
染色体異常があったら必ず流産するわけではありません。染色体異常があっても流産しないケースや、逆に染色体異常がなくても流産してしまうケースもあります。それぞれのケースについて詳しく解説します。
染色体異常があっても流産しないケース
染色体異常があっても流産しないケースがあります。染色体異常を含めて、生まれつきの疾患や障害を「先天性疾患(先天障害)」といいます。生まれた赤ちゃんのうち、3〜5%は何らかの先天性疾患を持ち、その「何らかの先天性疾患」のうち、約25%は染色体異常が原因です。
染色体異常のうち、最も多いのがダウン症(21トリソミー)でおよそ53%を占めます。また、18トリソミー、13トリソミーの頻度も高く、染色体異常の約7割がこの3種類のトリソミーです。
出生直後に特徴的な見た目や症状が確認され、検査をする場合もありますが、症状がほとんどないケースもあります。思春期に二次性徴が現れなかったり、妊活中の検査で発覚したりすることもあります。
また、性染色体異常は症状がほとんどない場合があり、一生気付かない人も一定数いるようです。
染色体異常がなくても流産するケース
染色体異常がなくても、流産してしまう可能性もあります。母体が原因になるケースでは、子宮形態異常、子宮腺筋症、子宮筋腫、子宮腔内癒着症などの子宮疾患があげられます。
また、感染症も流産の原因の1つです。早期流産の15%、後期流産の66%が感染症に起因しています。しかし、実際には流産の原因が細菌やウイルス感染であると断定できるケースは少なく、原因不明なことが多いようです。
精神的なストレスも流産に関係しています。一度流産すると、その不安や抑うつなどが次回の流産に影響を及ぼすという報告もあります。さらに、喫煙や過度のカフェイン摂取が流産を引き起こす可能性もあるため、妊娠を希望する方は控えましょう。
出典:1.総論|公益財団法人 日本産婦人科医会
流産を繰り返すケース
1回の流産がおこる確率は15%〜20%で、5〜6人に1人の割合で起こります。しかし、2回流産が続く反復流産が起こる確率は4%、3回流産が続く習慣性流産が起こる確率は0.8%と、確率は少なくなります。
このように流産を繰り返している場合には、胎児染色体異常以外に原因があるかもしれません。
染色体異常以外の流産の原因として、母体側に原因がある可能性があります。抗リン脂質抗体症候群などの血液凝固異常、子宮の形態異常、甲状腺などの内分泌機能異常の検査が必要になるでしょう。また、母体やパートナーに染色体構造異常などがないかも確認しましょう。
出典:不育症について~流産をくりかえすあなたへ~|東大阪市
染色体異常による流産を防止する方法
受精卵の染色体異常は高頻度で発生します。残念ながら生活習慣の改善や薬の服用で染色体異常を完全になくすことはできません。しかし、染色体異常以外の要因で流産が起こっている場合には、生活習慣の改善で流産を防止できる可能性があります。
喫煙や過度のアルコール摂取、過度のカフェイン摂取は流産のリスクを高めます。肥満も流産に影響を及ぼすため、適度な運動とバランスの取れた食事の摂取を心がけましょう。精神的なストレスを溜めないことも重要です。
また、流産しにくい身体を作るために漢方の服用も有効です。
当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)や芎帰膠艾湯(キュウキキョウガイトウ)の服用が、妊活に有効であるという報告があります。当帰芍薬散は血液循環を改善する働きや利尿作用によって、妊娠しやすい身体を作れるでしょう。また、芎帰膠艾湯には止血作用や流産を予防する作用があります。
半年程度漢方を服用しながら生活習慣を改善し、妊活に取り組むことで妊娠できる可能性が高まるでしょう。
2023.11.06
【流産防止】妊娠中に飲んでも大丈夫な漢方・ダメな漢方とは
漢方は流産予防に効果があるのでしょうか。この記事では、妊娠中に服用することがおすすめされている漢方を効果とともに紹介しています。また、妊娠中はダメなものや漢方の飲み合わせについても解説しているので、ぜひ参考にしてくださいね。...
出典:
不育症についての基礎知識|東京都福祉局
習慣 (反復)流早産の漢方治験|日本東洋医学雑誌
染色体異常による流産に関してのお悩みは「こうのとり」へ相談を◎
流産はどの妊婦にも起こる可能性があり、その約6割で染色体異常が見つかっています。
染色体異常は女性の年齢が上がるにつれて高頻度に出現し、それに伴い流産のリスクも高くなります。しかし現在の医療では、染色体異常を完全になくす有効な手段はありません。
一方で、漢方の服用を継続して体質改善を図ることで妊娠の成功率を上げられる可能性があります。さらに、食事や睡眠などの生活習慣を改善することによって、流産のリスクを抑えることができるでしょう。
漢方薬房こうのとりには、染色体異常による流産と診断されたご夫婦が多く来店されます。
私たちは、まず染色体異常があっても出産に至る場合があり、逆に異常がなくても流産する可能性があることをお伝えしています。染色体異常の発生率は卵子と精子で約2:1とされますが、生活習慣の改善と「こうのとり漢方(現代中国の先端漢方)」を服用することで、健常児を出産した事例が多くあります。
ある方は、第2子の妊娠で染色体異常による流産を3回経験されましたが、残業が多い激務環境を周囲の協力で改善し、漢方を増量して対応しました。その結果、44歳で第2子を健常児として出産しました。その後、「47歳で3人目の出産は可能ですか?」というご相談もいただきました。
当店での最高齢の出産例は、2022年に50歳で初産された方です。また、2024年7月には47歳で妊娠判定陽性となった方もいらっしゃいます。
現在の最高齢患者様(53歳)は、7月に来店され、3年間止まっていた生理が10月に回復。FSH値も77.1から20以下に改善しました。
このような事例を踏まえ、激務でない環境であれば47歳での3人目の可能性も十分にあるとお答えし、ご夫婦でご検討いただくようお伝えしました。
北陸富山の「漢方薬房こうのとり」では、妊活に詳しい専門家が丁寧にカウンセリングをおこない、相談に乗ります。漢方の選び方だけでなく、不妊治療や生活習慣についてもあなたに合った提案をしますよ。
遠方の方はオンラインでも相談が可能です。ぜひお気軽にお問い合わせくださいね。