体外受精で妊娠できても、流産してしまうケースがあります。体外受精で授かった子どもを流産しやすい年齢や時期はあるのでしょうか?また、流産を防ぐためにできることがあるのか気になりますよね。
今回は、体外受精と流産について、年齢別・週別の流産率や流産の兆候、体外受精で流産しないためにできることを詳しく解説します。実際に体外受精で流産を経験した人の口コミも紹介するので、参考にしてください。
体外受精で流産するケースについて
体外受精でも自然妊娠と同様、流産する可能性があります。また、体外受精の流産率は20%程度であり少し高めではありますが、流産率が約15%である自然妊娠と大きな差はないと考えられています。
流産とは「妊娠22週未満での妊娠中絶、または子宮内で発育せず心拍の見えない状態」と定義されています。流産に関わる言葉の概要については、以下の表を参考にしてください。
分類ジャンル | 流産の種類 | 概要 |
---|---|---|
原因 | 人工流産 | 人工妊娠中絶のことをさす。 |
自然流産 | 人工流産以外の、自然に起こる流産のことすべてをさす。 | |
症状 | 稽留流産 | 胎嚢が確認できない、または胎児は死亡しているが、出血・腹痛などの症状がない場合をさす。自覚症状がないため、医療機関の診察で初めて確認される。 |
進行流産 | 出血があり、子宮内容物が外に出てきている状態をさす。 | |
流産の時期 | 化学流産 | 尿や血液を用いた妊娠判定後、超音波検査で妊娠が確認できる前に流産してしまった状態をさす。 |
早期流産 | 妊娠初期である妊娠12週未満の流産のことで、流産全体の8割を占める。多くは胎児の染色体の異常が原因といわれる。 | |
後期流産 | 妊娠12週以降22週未満の流産のこと。母体側の異常によるケースが多い。 | |
その他 | 切迫流産 | 胎児が子宮内に残っており、流産の一歩手前である状態をさす。 |
流産の兆候として出血や腹痛が挙げられますが、これらは正常な経過の妊娠中でも起こりうる症状です。
少量の出血や軽度の腹痛があっても、翌日もしくは健診予定日の受診でも十分と考えられています。ただし、生理のときよりも出血量が多い場合や腹痛がひどい場合は、流産の可能性があるため、速やかに受診しましょう。
出典:
研修ノートNo.99 流産のすべて 序章|日本産婦人科医会
流産・切迫流産|日本産科婦人科学会
体外受精が流産しやすい理由
体外受精が流産しやすいといわれる理由には、体外受精を行う人の年齢が関係していると考えられています。
30代後半になると、女性の体内では卵子の数の減少や質の低下が起こり、妊娠率は低く流産率は高くなる傾向にあります。近年、不妊治療を受ける人の年齢層が高まっていることが、体外受精の流産率が高い理由でしょう。
「妊娠に至るまでの過程で人の手が加わることが、体外授精の流産率が高い理由なのではないか」という疑問を持つ方もいますが、自然妊娠の妊娠率に大きな差はないといわれています。
出典:
Q23.女性の加齢は流産にどんな影響を与えるのですか?|日本生殖医学会
体外受精関連Q&A(13題)|札幌医科大学産婦人科
【年齢別】体外受精の流産率は?
体外受精の流産率は、自然妊娠や人工授精などと同じく、妊婦が高齢になるにつれて上昇します。
ここからは、具体的な年齢別に体外受精の流産率を見ていきましょう。
出典:不妊治療の実態に関する調査研究 最終報告書|厚生労働省
35歳が体外受精した場合の流産率
35歳が体外受精した場合、流産率はおよそ20%です。20代前半から35歳までは同じような確率で推移しています。
40歳が体外受精した場合の流産率
40歳が体外受精した場合、流産率はおよそ30%です。30代後半にさしかかると卵子の質が下がり始めるといわれており、胎児の染色体異常の確率が上がるため流産しやすくなるといえるでしょう。
45歳が体外受精した場合の流産率
45歳が体外受精した場合、流産率は40%を超えます。また、医療機関によっては45歳以上の体外受精を行わないケースもあります。これは、卵巣機能の低下によって染色体異常のある卵子が増えるため、妊娠率・流産率が高くなることが理由です。
出典:O-27 女性年齢45歳以上の患者にARTは有効か?|日本IVF学会
【週数・タイミング別】体外受精の流産率は?
体外受精の流産率は、年齢だけでなくタイミングや週数と関係があるのでしょうか。
まず、体外受精によって妊娠の陽性判定が出た後の化学流産率は、染色体異常がない正常胚を移植した場合で約10%で、女性の年齢が高くなるにつれて確率が上昇するという報告があります。
また、オーストラリアの報告によると、体外受精で妊娠したときの心拍確認後(妊娠7週頃)の流産率は12.2%です。
体外受精の流産率は、週数が進むにつれて変化があるのか気になりますよね。
ここからは、週別の体外受精の流産率を紹介します。
妊娠9週以降の流産率
人工授精による妊娠9週以降の流産率は、約8%と報告されています。この時期は器官形成期と呼ばれ、奇形が発生したり、流産したりする可能性があります。
妊娠11週以降の流産率
妊娠11週を超えると、流産率は約4%とかなり低下します。この時期には目や耳も完成し、胎児としての成長を始めます。染色体異常による影響は、この時期にはほぼ受けないと考えられています。
妊娠13週以降の流産率
妊娠13週以降の流産率は約2%です。この時期の流産は後期流産と呼ばれ、母体側に問題があるケースが多いとされています。
以上のことから、週数が進めば流産率が低下するといえます。重要な器官の形成が終わり、染色体異常による流産の確率がほぼなくなることが理由でしょう。
出典:Risk of spontaneous abortion in singleton and twin pregnancies after IVF/ICSI|human reproduction
【体験談】実際に体外受精で流産した人の声
体外受精の流産率や、年齢や週数による確率の変化を見てきましたが、実際に体外受精で流産した人の声が気になりますよね。
ここからは、「体外受精で流産した」というXやブログの投稿を見ていきましょう。
30歳で、6週目に化学流産した方の投稿です。妊娠時に体内で分泌されるhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)が少なかったようですね。
41歳で人工授精している方で、妊娠8週で稽留流産だとわかったそうです。
32歳で、7週目から胎嚢に異常があり、稽留流産した方の投稿です。
順調だと思っていたのに、昨日の夜、稽留流産していることが発覚。今日、流産処置の手術をしました。丸一日の間で色んな事が起こりすぎて、まだ頭は混乱状態です。
妊娠11週で稽留流産した方のブログです。
これらの投稿はすべて年齢や週数が異なるものであることから、流産するタイミングは人それぞれだとわかりますね。
体外受精で流産した後の治療再開について
体外受精で流産した後、できるだけ早めに不妊治療を開始したいと思うのは当然です。
治療再開は流産手術または完全自然流産が終了し、生理が1度来たタイミングから可能と考えられています。ただし、血中hCG値が高いままでは再開を見送ることも多いようです。
「2回生理が来たら治療再開」と指導する医療機関もあるようですが、治療再開に適した時期に関する明確な研究データがないのが現状です。
子宮内膜の回復や排卵の再開が、体外受精で流産した後の次の移植に関与すると考えられているため、子宮や卵巣の働きを正常に保つ工夫を心がけたいですね。
体外受精で流産しないためにできること
体外受精で流産しても、多くの産婦人科の医師は「流産の原因は本人の問題で、病院では何もできない」と伝えます。しかし、体外受精で流産しないためにできることはあります。
たとえば、妊娠9週以降の流産には子宮内膜の薄さが関わっているとされており、流産予防には子宮内膜の厚みを維持する力をつけるとよいでしょう。また、流産率に関わる卵子や精子の質を高めることも大切です。
ここでは、体外受精で流産しないためにできることの例を紹介します。
体外受精で流産しないためにできること | 効果がある理由 |
---|---|
タンパク質を多く摂る | タンパク質の摂取量が多い人は、子宮内膜が厚くなりやすい。 |
ビタミンDを摂取する | ビタミンDを十分に摂取することで、流産率が下がり、着床率や妊娠率が上がったというイギリスの報告がある。 |
ビタミンEを摂取する | ビタミンEには、抗酸化作用や、血行を促進する効果、ホルモンバランスを調節する作用があり、子宮内膜が薄い患者にビタミンEの投与を行う医療機関もある。 |
葉酸を摂取する | 葉酸の摂取で、胎児の脳や脊髄が正常に機能しなくなる神経管閉鎖障害が発症する危険性が70~80%低下する。 |
温活を取り入れる | 血流が改善し、子宮や卵巣に十分な栄養が行き渡り、妊娠しやすさ・着床しやすさがアップする可能性がある。 |
漢方で体質改善を行う | ホルモンバランスを整える効果がある漢方や、卵子や子宮内膜、精子の質を上げる漢方を使うことで、妊娠しやすく流産しにくい状態に導く。 |
また、流産を何度も繰り返す不育症の人には柴苓湯(サイレイトウ)という漢方が使われます。
流産しやすい体質から、妊娠しやすく着床を維持しやすい体質に改善するために、漢方は効果的です。人工受精で子どもを授かるために、自分に合う漢方の使用を検討することをおすすめします。
出典:
不妊治療に光明!ビタミンDが妊娠率アップ&流産率ダウンに効果あり│大塚製薬
ビタミンEにはどんなはたらきがありますか?│第一三共ヘルスケア株式会社
生殖・内分泌 クリニカルカンファレンス 不妊治療の問題点(難治性不妊症)とその対策 2)薄い子宮内膜|日本産婦人科学会雑誌
不育症に対する柴苓湯の使用経験|Phil漢方
体外受精の流産に関するよくある質問
ここからは、体外受精の流産について気になる疑問をまとめて解説いたします。
体外受精で流産しやすい時期は?
体外受精で流産しやすい時期は、自然妊娠の場合と同じく妊娠5〜6週目であり、12週目を超えると流産率は大きく低下します。妊娠初期は、子ども側の染色体異常や遺伝子の病気による流産が8割を占め、母体の影響は少ないと考えられています。
体外受精で流産する兆候はある?
体外受精で流産する兆候は以下のとおりです。
- 出血
- 腹部の張り・下腹部痛
- 腰の痛み・だるさ
しかし、正常な妊娠経過でも、流産とは関係なく「着床出血」や「妊娠月経」と呼ばれる出血がみられたり、腰痛や腹痛を感じることがあるため、症状があっても必ずしも流産するとはいえません。
体外受精で流産を繰り返すのは不育症?
不育症とは、「妊娠はするけれども継続できず、2回以上流産や死産を繰り返す状態」をさします。体外受精で2回以上流産する場合も、不育症に当てはまります。
産婦人科で不育症の検査を受けることをおすすめします。
出典:
生殖医療Q&A Q17. 不育症とはどういうものですか?|日本生殖医学会
不育症に関する疑問にお答えします。|Fuiku labo
体外受精による流産でお悩みなら、漢方がおすすめ
体外受精では、自然妊娠と同じく流産の可能性があります。流産の多くは妊娠12週までに起こり、原因の多くが子ども側の染色体異常です。
また、女性が高齢になるにつれて卵子の質が低下することで、流産率が上昇すると考えられています。
多くの産婦人科では「流産の原因は本人の問題で、病院では何もできない」と言われてしまいますが、実際は食生活や漢方で体質の改善が可能です。特に漢方では、卵子や精子の質を上げたり、着床しやすくしたりする効果が期待できますよ。
北陸富山の「漢方薬房こうのとり」では、体外受精による流産の悩みをヒアリングし、その方の症状や体質に合わせた漢方を提案します。漢方や妊活の知識が豊富な専門家による手厚いサポートで、多くの方の妊娠実績があります。
また、染色体異常が続いたり、不育症であったりしても、漢方の服用と生活習慣の改善で元気な赤ちゃんを出産したケースも多くあります。
対面でのカウンセリングだけでなく、オンライン窓口での相談も受け付けているので、「体外受精で流産してしまった」「流産しにくい体になりたい」と考えている方は、お気軽にお問い合わせください。