不妊治療における「採卵」は、多くの女性にとって大きな山場です。治療の準備期間を経て臨むその一日は、身体的な負担だけでなく、精神的にも大きなプレッシャーがかかる瞬間といえるでしょう。しかし現実には、「卵が取れなかった」「1個しか採れなかった」「受精しなかった」といった結果に直面することも少なくありません。
本記事では、採卵がうまくいかなかった理由を医学的な観点から整理し、今後の治療にどう向き合えばいいのかを解説します。
また、同じような経験を乗り越えて妊娠に至った実例も紹介しています。先の見えない治療の中で、少しでも確かな選択ができるよう、本記事がその一助となれば幸いです。
「落ち込む」「メンタル崩壊する」採卵失敗の現実
採卵の失敗は、単なる医療的な結果では済まされないほど、大きな精神的ダメージをもたらすことがあります。
排卵誘発剤の注射や通院スケジュールに合わせた生活の調整、金銭的な負担、そして何より「今回こそは」と願って臨んだ治療。それらすべてが報われなかったと感じたとき、落ち込みや自己否定の感情に押しつぶされそうになる方も少なくありません。
「どうして私だけ?」「もう何をしても無理なのかもしれない」といった思考に陥り、涙が止まらなくなる。誰にも相談できず、SNSや検索に救いを求める。こうした状況は、決して珍しいことではありません。
不妊治療の現場では、「心のケア」が見過ごされがちですが、採卵の失敗が引き起こす心のダメージは、身体的な痛み以上に深刻になることもあります。精神的に限界を感じる前に、いまの気持ちを整理する時間を持つこと、必要に応じてカウンセリングを利用することも、自分を守るための大切な選択です。
採卵の結果が思わしくなかったからといって、あなたの価値が損なわれたわけではありません。今後の治療をどうするかを考えるのは、その「落ち込み」を受け止めたあとでも決して遅くはないのです。
なぜ?採卵で「0個」「1個だけ」になる原因
ここでは、今後の治療方針を考える手がかりとして、採卵数が少なくなる主な原因を医学的観点から整理して紹介します。
加齢による卵巣機能の低下
女性の卵巣には、生まれたときから一定数の卵胞(卵子のもと)が備わっており、新たに増えることはありません。その数は出生時に約200万個といわれていますが、思春期には20〜30万個にまで自然に減少し、加齢とともにさらに減っていきます。そして閉経を迎える頃には、ほぼゼロに近づきます。
特に35歳を超えると卵巣の予備能(卵巣に残された卵子の数や質を示す能力)は急速に低下し、採卵数が減る現象が起きやすくなります。こうした生物学的な背景から、加齢は採卵の成功率を左右する大きな要因の一つとされています。
出典:プレコンセプションケアの提供のあり方に関する検討会 第2回 資料|こども家庭庁
ホルモン値のバランス異常
卵巣機能を評価する指標として、FSH(卵胞刺激ホルモン)とAMH(抗ミュラー管ホルモン)の値が重要です。FSH値が高い場合、卵巣の反応性が低下している可能性があります。一方、AMH値は卵巣内の卵胞数を反映し、低い値は卵巣予備能の低下を示唆します。AMHは月経周期による変動が少なく、卵巣機能の評価に有用とされています。

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排卵誘発の方法には、以下のようなものがあります。
- ショート法
- ロング法
- アンタゴニスト法
- 自然周期法
医療機関は、患者の年齢や卵巣機能に応じて適切な刺激法を選択する必要があります。刺激法が体質に合っていない場合、卵胞の発育が不十分となり、採卵数が減少する可能性があります。
体質や生活習慣、ストレス
体重や生活習慣も卵巣機能に影響を与えます。肥満や低体重はホルモンバランスを乱し、排卵障害の原因となることがあります。
また、喫煙は卵巣への血流を減少させ、卵子の質や数に悪影響を及ぼすことが知られています。
ストレスも大きな要因であり、「仕事をやめただけで不妊治療がうまくいった」なんてケースも少なくありません。
その他の要因
採卵がうまくいかない原因は多様で、たとえば以下のような要因も考えられます。
- 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
- 卵巣手術や疾患の既往
- 早発卵巣不全(POI)
これを特定するのは容易ではないため、一部のクリニックでは誤ったアプローチをしてしまうこともあります。詳しくは後述しますが、成功のためのアプローチは1つではないことを知っておくとよいでしょう。
採卵できても「卵子の質」が低く失敗するケースも
体外受精では、卵子の「数」だけでなく「質」も重要です。たとえ採卵数が十分でも、卵子の質が悪ければ、受精しない・胚が育たない・着床しないといった段階でつまずくケースも多く見られます。
卵子の質が悪くなる主な要因
卵子の質は、加齢とともに低下していくことが分かっています。特に35歳以降は、染色体異常を持つ卵子の割合が増え、妊娠に至りにくくなる傾向があります。
そのほかにも、以下のような要因が卵子の質に影響します。
- ミトコンドリア機能の低下
- 酸化ストレス
- 生活習慣の乱れ
詳しくは、以下の記事でも解説しています。

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卵子の質が低いことが着床や分割に与える影響
卵子の質が低いと、たとえ受精してもその後の発育に問題が生じやすくなります。具体的には以下のようなリスクが挙げられます。
- 胚が途中で分割停止する
- グレードの低い胚盤胞しか得られない
- 染色体異常により着床しない
- 流産の可能性が高まる
これらは受精卵側の問題であるため、どれだけ子宮内膜の状態が整っていても、妊娠には至らないことがあります。
卵子の質を保つ・改善するためにできること
卵子の質は完全にコントロールできるものではありませんが、できる限り良い状態を維持するためには、漢方によるアプローチを行うのが効果的です。
北陸富山の「漢方薬房こうのとり」では、医療機関と連携しながら、妊娠・出産までを一貫してサポートしています。
特に、本当に必要な検査を医療機関で早期に受けていただく体制を整えることで、無駄のない妊活支援を実現。
漢方による体質改善を通じて、採卵の段階はもちろん、卵子の質の向上にも注力し、多くの方の妊娠・出産につなげてきた実績があります。
採卵や卵子の質に関して、「今通っているクリニックを信用しきれない……」という方こそ、ご相談ください。無料相談から、専門のスタッフが対応させていただきます。
採卵失敗後の改善ポイント・成功確率の上げ方
採卵に失敗したとき、「もう終わりかもしれない」と感じてしまう方も少なくありません。しかし、1回の失敗で全てが決まるわけではなく、見直しや工夫によって次回の成功率を高められるケースも多く存在します。
再度の刺激法の見直し
採卵数が少なかったり、卵子の成熟度が低かった場合は、排卵誘発の方法(刺激法)を見直すことで改善が期待できることがあります。
たとえば、低刺激で卵胞が育たなかった場合には、より強い刺激に変更することで採卵数が増えることもあります。逆に、過剰刺激によって卵胞の質が悪化していた場合は、刺激を抑えることで改善が見られることも。
同じクリニックでも医師によって方針が異なる場合があるため、「刺激法の選択が本当に自分に合っていたか」を振り返ることが大切です。
漢方による体質改善
西洋医学的な治療に加え、漢方による体質改善も効果的です。
たとえば、「当帰芍薬散」や「温経湯」などは、血の巡りやホルモンのバランスを整える目的で処方されることが多く、実際に卵巣機能の改善に寄与する可能性があると報告する医師もいます。
もちろん、体質や体調により適切な処方は異なるため、専門医(漢方外来や不妊漢方の専門薬局)への相談が前提となります。
セカンドオピニオンや転院
採卵を複数回失敗している場合、同じ治療方針を繰り返すことに限界を感じる方もいるでしょう。そうしたとき、セカンドオピニオンを受けることは有効な選択肢です。
他院では異なる検査方法や培養技術、刺激法の引き出しを持っていることがあり、同じ患者でも結果が大きく変わることもあります。とくに「いつも同じ結果になる」「医師との対話が少ない」「個別対応に限界がある」と感じている場合は、転院を前向きに検討するタイミングかもしれません。
重要なのは、「自分に合った治療法を見つける」ことであり、通院先を変えること自体にリスクがあるわけではありません。選択肢を広げる視点を持つことが大切です。
【実例】採卵に失敗しても、そのあと成功できた人の声
実際には、初回や2回目の採卵で失敗を経験しながらも、治療を続けた結果、妊娠・出産に至った方も少なくありません。
ここでは、そんな「失敗からの再挑戦」を経て希望をつかんだ実例をいくつか紹介します。
結果が出なかった「高刺激」から、あえて「低刺激」へ
30代後半で不妊治療を始めたAさんは、最初の採卵で10個の卵子が採取できたものの、胚の発育が思わしくなく、移植しても着床には至りませんでした。医師の勧めで高刺激法を続けましたが、採卵数は多くても質に課題があり、気持ちも体力もすり減っていったといいます。
そこで方針を見直し、あえて刺激を抑えた「低刺激法」に切り替えたところ、採れた卵子は2個。それでも両方とも良好な胚に育ち、1つを移植したところ初めて妊娠反応が確認されました。

漢方薬房こうのとりでは、以下のような方には「自然周期」や「低刺激法」を基本とする不妊治療が相性が良いと考えています。
- 43歳以降の方
- もともと体力に不安がある方
- 仕事などによるダメージの蓄積が多い方
そのため、当薬房ではこうした方々に対して、自然周期療法を採用している「金沢たまごクリニック」などの医療機関を原則としてご紹介・ご提案しています。
漢方治療で、卵の質が向上
Bさんは、30代前半で不妊治療を始めたものの、採卵のたびに「数は取れても胚が育たない」「移植しても着床しない」といった状況が続き、精神的にも体力的にも限界を感じていました。
担当医の勧めで、治療を中断せずに並行して漢方外来を受診。専門的な知識を元にしたアプローチで具体的な道筋が示されたため、思い切って漢方の服用を開始しました。
数カ月の服用と生活改善を続けた結果、次の採卵では「受精率が上がった」「初めて胚盤胞まで育った」と医師から評価され、採れた1つの良好胚を移植して妊娠に成功。
Xでもさまざまな声が
SNS(旧Twitter)でも、「最初は採卵0個だったけれど、地道に続けて妊娠できた」「数は少なくても1個の胚から妊娠に至った」という声が数多く見られます。思うような結果が出ないとき、自分だけがうまくいっていないように感じがちですが、同じように悩みながら前に進んだ人たちの声は、きっと心強い味方になるはずです。
私より後に不妊治療に入ったコは、一度の採卵で1個か2個で、3回目の移植で成功して、今もう産後半年になってる。私は最初の採卵で13個採れて6個凍結出来たけど全部ダメでまた採卵から。今回は低刺激で2個だったしまだ受精卵になったか分からないけどそのコの例があるからめちゃくちゃ期待してる!
— jg (@Ghhfghj14) July 14, 2023
採卵③終了!
今回は2個とれました!!
1回目は0個、2回目は1個だったから
2個でもすごくすごく嬉しい…!🥹🥚
どうか育ってくれますように!— ぱぴこ☺︎初マタ25w🎀 (@papipapiko888) September 30, 2023
採卵木曜日に決まりました。
今回は5個とれそうで、
大きさも全て良い感じのようです。
これまでは1個か2個という数しかとれなかったので、もしそうなれば自己新記録!
今周期も、もう一踏ん張り頑張るゾ〜。— popy🍿1人目妊活中@低AMH (@popy_san) May 26, 2025
【FAQ】採卵の失敗に関するよくある質問
ここでは、採卵に関してよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
採卵の失敗はいつわかる?
採卵の「失敗」にもいくつかの段階があります。もっとも早い段階では、採卵当日に「卵子が採れなかった」ことが判明するケースです。その後の受精や胚の発育状況は、採卵後1日目(受精確認)や3〜5日目(胚の成長具合)で明らかになります。結果は培養士や医師から説明されるため、不明点はその場で確認すると安心です。
採卵に連続で失敗することもある?
あります。加齢や卵巣機能の低下、刺激法の相性が悪い場合など、数回にわたって採卵結果が振るわないことは珍しくありません。ただし、その場合でも刺激法の変更や体質改善、転院による治療方針の見直しで成功に至った例は多くあります。1回の失敗であきらめず、対策を講じることが重要です。
採卵中止になる主な理由は?
採卵直前になって中止になる場合、以下のような理由が考えられます。
- 卵胞が育たなかった(成長不足)
- 排卵済みで卵がすでに排出されていた
- ホルモン値の乱れ(E2やLHの急上昇など)
- 体調不良や内膜不良などで安全に実施できないと判断された
中止は落胆する出来事ですが、無理に採卵しても良い結果が得られない場合は、中止という判断も将来の妊娠につながるステップと捉えることが大切です。
採卵失敗は辛いこと。こうのとりは次の成功を徹底サポートします
採卵に失敗したとき、のしかかるのは体の疲れだけではありません。心の迷いや不安、先の見えない焦燥感に押しつぶされそうになる方も少なくありません。そんなときに必要なのは、納得できる治療方針と、専門的な視点で相談できる場所です。
北陸富山の「漢方薬房こうのとり」では、そうした方々の体と心の両面を整えるサポートを大切にしています。とくに、体質・ホルモンバランス・血流・自律神経の乱れといった、採卵結果に大きく影響する根本原因に対しては、漢方医学の視点から丁寧にアプローチします。
漢方医学の立場では、受精卵の質は卵子と精子の質の“平均”とされています。つまり、採卵失敗の原因の半分は、精子の状態にもあるということです。
ところが、産婦人科では精子に関して「運動率が42%を超えていれば問題ない」と判断されることも多く、運動率40%台前半で体外受精をしても、妊娠判定が出た後に継続できないことがほとんどです。本来、精子の運動率は精子の質そのものであり、妊娠の継続には80〜90%以上が望ましいと考えています。
「漢方薬房こうのとり」では、まずこの事実をご理解いただくところからサポートが始まります。
また、卵子の質は排卵前6カ月の生活の質で決まるとされ、なかでも重要なのが基礎体温の高温期です。
漢方的には、「過去6カ月のうち高温期が10日以上ある周期が4回未満」であれば、たとえ精子の運動率が90%以上でも、初期胚ができる前に受精卵が消失してしまう可能性が高いと考えます。
実際に当薬房でも、高温期が10日以上あった周期が3回のみの方で、旦那様の精子の運動率が90%以上だったにも関わらず、すべての受精卵が移植前に消失してしまったケースがありました。
そのため、私たちはまず最初に、「どうすれば高温期が10日以上続くようになるか」という点から、卵子の質改善についてご説明しています。
「漢方薬房こうのとり」では、卵子だけでなく精子の質も同時に高めることを重視しており、その結果として以下のような実績を出しています。
- 半年以内に50%以上の方が妊娠判定陽性
- 1年以内で約70%、1年半で80%以上
- 2年以内には約9割の方が妊娠判定陽性
詳しくは漢方薬房こうのとりの公式サイトトップをご覧ください。
ご不安な方には、無料相談や体質チェックから始めることも可能です。無理なく続けられる方法を一緒に考え、次のチャンスにつながるお手伝いができれば幸いです。
