不妊・妊活でお悩みの方は、
漢方薬房こうのとりへ

男性の不妊漢方

前進運動率を上げる漢方とは?低い原因や上げる方法、漢方以外のアプローチも紹介

この記事を監修した人

京都薬科大学特命教授 兼 薬剤師
戸口 瑞之
漢方薬房こうのとり 代表

元富山総合薬局代表。現漢方薬房こうのとり代表・管理薬剤師 / 現京都薬科大学特命教授。
飲む量の加減のみ必要で万人に合う現代の中国漢方(中医)に大学病院時代から36年携わる。
漢方薬房こうのとりでは、直近3年で100人以上の方が目標を達成されています。

精液検査で「精子の前進運動率が低い」と言われ、不安を感じていませんか?

運動率の低下は男性不妊の一因ですが、体質や生活習慣の見直しで改善が期待できるケースもあります。

この記事では、漢方によるアプローチを中心に、精子の運動率を高める方法を紹介します。

あわせて、サプリや医療機関での治療なども解説しますので、妊娠に向けた準備の参考としてお役立てください。

精子の前進運動率が低い主な原因

精子が卵子にたどり着くためには、しっかりと前に進む力が必要です。
前進運動率が低いと自然妊娠の可能性が下がる傾向があり、不妊治療でも重視される指標です。

前進運動率の低下には、生活習慣の乱れや精巣の環境、ホルモンバランスの変化など、いくつかの要因が関係していると考えられます。

まずは、主な原因を知ることから始めましょう。

生活習慣の乱れと酸化ストレス

喫煙や過度の飲酒、肥満といった生活習慣の乱れは、体内の活性酸素(ROS)を増加させる要因です
この活性酸素が過剰になると、精子の細胞膜が酸化され、柔軟性や運動性が損なわれてしまいます。

また、精子内のミトコンドリア機能が低下すると、前に進むためのエネルギーが不足し、推進力も弱くなると考えられています。

生活習慣の積み重ねは精子機能に影響し、前進運動率の低下と関連する例も報告されています。

精巣温度の上昇と環境要因

精子は、やや低めの温度環境でつくられるのが理想です。

そのため、長時間のサウナや膝の上でのパソコン作業、締めつけの強い下着などは、陰嚢の温度を上げてしまい、精子をつくる過程に悪影響を及ぼす可能性があります

また、身の回りにある農薬やプラスチック製品などに含まれる「内分泌かく乱化学物質(EDC)」にも注意が必要です。

これらは体内のホルモンバランスを乱すだけでなく、精子の動きを支える「鞭毛(べんもう)」の運動性にも影響を与える可能性があると報告されています。

ホルモンバランスの乱れ・加齢の影響

男性ホルモンの一種である「テストステロン」は、年齢とともに徐々に減少していきます。

テストステロンが減少すると、精子を育てる役割をもつ「セルトリ細胞」の働きが弱まり、精子形成に影響が出ることがあります

また、慢性的なストレスや睡眠不足は、ホルモン分泌の調整に関わる脳の働きを乱しやすく、精子形成に必要なホルモンの分泌量にも影響を及ぼすとされています。

年齢や生活習慣によるホルモンの変化は自覚しにくいものですが、精子の状態にも少なからず影響すると考えられています。

精子の前進運動率は漢方で上がるのか

男性不妊では、精子がまっすぐ進む「前進運動率」の低下が問題になることがあります。
この運動率を改善する手段として、漢方薬が補助的に使われるケースがありますが、有効性についてはまだ意見が分かれています。

ここでは、前進運動率の改善に用いられる主な漢方薬と、その効果に関する知見をご紹介します。

精子の前進運動率改善における漢方薬のエビデンス

漢方薬は、男性不妊の補助療法として使われることがありますが、医学的な効果についてはまだ十分に解明されていません。

最近の研究では、補中益気湯(ホチュウエッキトウ)や八味地黄丸(ハチミジオウガン)によって、精子の数や動きが改善したという結果もあります。

ただし、信頼性の高い検証方法による試験では、はっきりとした効果が確認されていないのが現状です
そのため、今後の研究による裏付けが期待されます。

精子運動率向上に用いられる主な漢方処方

男性不妊に対する漢方治療では、体質や症状に応じて処方が選ばれます。
代表的な処方には、以下のようなものがあります。

  • 補腎作用をもつ八味地黄丸(ハチミジオウガン)
  • 腎虚に対応する牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)
  • 全身の活力を高める補中益気湯(ホチュウエッキトウ)
  • ストレスや神経過敏に用いられる柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)

また、血のめぐりの悪さ(瘀血)を改善する桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)は、男性不妊の一因とされる精索静脈瘤(陰嚢内の血流うっ滞)に対して補助的に使われることもあります。

これらの漢方薬にはそれぞれ異なる作用があり、体質に合わせた適切な処方が重要です。

服用前に確認したい体質診断と併用の注意点

漢方薬は比較的副作用が少ないとされますが、「薬」である以上、体質や併用薬によってはリスクもあります。

例えば、甘草(カンゾウ)を含む処方を複数飲むと、まれに高血圧や浮腫を伴う副作用が出ることもあります。
西洋薬やサプリと併用する場合は、必ず医師に相談しましょう。

また、漢方は即効性がないため、体質に合うかどうかを見極めながら数カ月かけて判断します。
自分に合った処方かどうか、専門家の診断を受けてから始めるのが安心です。

【一覧】精子の前進運動率を上げる漢方

男性不妊の漢方治療では、「腎(=生殖力)」を補う処方を中心に、体質や症状に応じてさまざまな漢方薬が用いられます。
精子の前進運動率の改善が期待される代表的な処方を一覧でご紹介します。

ただし、どの漢方が適しているかは体質や症状によって大きく異なります。
自己判断は避け、漢方に詳しい専門家へ相談したうえで、服用を検討するようにしましょう。

八味地黄丸(ハチミジオウガン)|腎陽虚タイプ

腎機能の低下や下半身の冷えが目立つ体質に用いられる補腎剤です

中等度の乏精子症や精子の運動率低下に対して、改善例の報告があります。

補中益気湯(ホチュウエッキトウ)で効果が不十分だった症例でも、八味地黄丸(ハチミジオウガン)への切り替えで改善が認められた例があり、体質に応じた処方変更の可能性が示唆されています。

補中益気湯(ホチュウエッキトウ)|気虚・虚弱体質

胃腸が弱く、疲れやすい「気虚(ききょ)体質」に用いられる補気剤です

抗精子抗体を含む血清を使った実験では、補中益気湯の添加によって精子運動率の低下が抑えられたと報告されています。

また、乏精子症患者を対象とした臨床研究では、補中益気湯の投与後に精子濃度および運動率が一定の改善を示した例も報告されています。

ただし、効果には個人差があるため、すべてのケースに効果が見込めるわけではありません。

出典:
運動精子における補中益気湯の直接的効果|J-STAGE
乏精子症に対する補中益気湯の臨床的効果について|KURENAI(京都大学学術情報リポジトリ)

牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)|冷えと浮腫を伴う腎虚

牛車腎気丸は、八味地黄丸に利水作用のある生薬を加えた処方で、冷えやむくみ(浮腫)を伴う腎虚タイプの体質に用いられます。

乏精子症に対して使用された臨床例では、3カ月以上の服用により、精子運動率が改善したケースも報告されています。

冷えや浮腫の症状が目立つ方に対して、八味地黄丸から牛車腎気丸に切り替えて処方されることもあります。

出典:男性不妊症に対する牛車腎気丸の効果|KURENAI(京都大学学術情報リポジトリ)

柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)|ストレス・神経過敏

精神的な緊張や不眠が強い男性不妊のケースに対して、柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)を投与したところ、精子濃度や運動率が有意に上昇し、妊娠率が21%に達したとする臨床報告があります

また、ストレスが原因の勃起障害を伴う場合にも、併用されることが多い処方です。

出典:5.男性不妊症に対する柴胡加竜骨牡蛎湯の効果|泌尿器科漢方研究会

桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)|瘀血・精索静脈瘤

桂枝茯苓丸は、瘀血(おけつ)による血行不良を改善する代表的な処方です

精索静脈瘤における静脈血のうっ滞も「瘀血」ととらえられ、内科的なアプローチとして桂枝茯苓丸が用いられることがあります。

精索静脈瘤に対し、手術以外の補助療法として漢方を活用するケースもあり、その一例として挙げられています。

精子の前進運動率を上げる漢方以外のアプローチについて

精子の前進運動率を高めるには、漢方だけに頼るのではなく、栄養管理や生活習慣の見直し、必要に応じた医療的サポートも組み合わせていくことが大切です。

最近の研究では、酸化ストレスの抑制、体温の安定、ストレス管理などが精子の運動性に影響を与えることが示唆されています。

ここからは、漢方以外のアプローチについて具体的にみていきましょう。

サプリメントは効果的?

ビタミンC・E、コエンザイムQ10、L-カルニチン、セレンなどの抗酸化サプリは、体内の活性酸素を減らし、精子膜を保護する働きがあるとされています。

実際、2019年の国際的な医療研究レビュー(コクランレビュー)では、「精子の運動率が改善した」とする報告がある一方で、全体としては証拠の確かさは中程度と評価されています。

効果には、サプリの量や服用期間、もともとの体調などが影響するため、確実性は高くありません。サプリメントはあくまで補助的なものととらえ、まずは食事からしっかり栄養を摂ることが基本です

出典:Antioxidants for Male Subfertility|Cochrane Library

生活習慣はどう改善すべき?

精巣は、体温より2〜3℃ほど低い環境で最もよく働くとされています。
そのため、長時間のサウナ、ノートPCを膝上に置く姿勢、きつい下着などで陰嚢の温度が上がると、精子の運動率が低下しやすくなります。
通気性の良い衣類を選び、定期的に休憩を取ることが大切です。

また、心理的ストレスや睡眠不足も、男性ホルモン(テストステロンやLH)の分泌を抑える要因となり、精子の質に影響を与えるといわれています。

週150分程度の有酸素運動や十分な睡眠、マインドフルネス・カウンセリングなどのストレスケアを取り入れることで、精子の運動率の維持に役立つ可能性があります。

出典:
The process of spermatogenesis liberates significant heat and the scrotum has a role in body thermoregulation|PubMed
Effects of Physical Activity on Fertility Parameters|National Library of Medicine

医療機関での専門的治療は?

生活習慣やサプリメントで変化が感じられないときは、病院で状態を詳しく調べることが大切です。

まずは、精液検査・ホルモン検査・超音波検査などを通じて、体の内側から原因を探っていきます。

例えば、陰嚢まわりの血流が悪くなる病気(精索静脈瘤)が見つかることがあります。
症状が軽ければ、体を冷やさないようにしたり、漢方などで整えたりする方法がとられることもありますが、重い場合は手術によって血流の改善をめざすことがあります。

また、精子の動きが極端に悪いときには、人工授精(IUI)や顕微授精(ICSI)といった方法が検討されるでしょう。

検査や治療を進める際は、男性の妊娠への関わりを専門に診ている医師と相談して進めてください。

【閑話】漢方による男性機能の改善

漢方は体の土台を整える発想で、元気・めぐり・気持ちの張りを底上げし、結果として男性機能に良い変化が出ることがあります

例えば、冷えや疲れが気になるタイプには八味地黄丸(ハチミジオウガン)や牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)を用いることがあり、寝つきの悪さや緊張が強いときは柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)を選ぶケースもあります。

数値の改善だけでなく、朝の目覚めや体の軽さなど「調子の底上げ」を実感する方もいます。合う処方は体質で変わるため、気になる場合は専門家に相談してください。

【事例】精子の前進運動率を漢方で上げた人の声

精子の前進運動率を高める手段として、漢方を取り入れる男性が増えています。
効果には個人差がありますが、体への負担が少ない方法として関心が高まっています。

ここでは、実際に改善を感じた方の声を紹介します。

男性専門クリニックで発覚、漢方で運動率が改善

一見問題がなさそうでも、見落とされているケースがあります。
あるご夫婦は、一般の不妊治療クリニックでの検査では異常なしとされていましたが、採卵しても胚の発育が止まることが多く、念のため男性専門の生殖医療クリニックを受診しました。

精密検査の結果、前進運動率の低下が判明し、漢方とサプリを3カ月間続けたことで、運動率が改善したそうです
思わぬ落とし穴に気づけたことで、治療方針の見直しにつながったとのことです。

運動率9%→26%に改善!補中益気湯で変化を実感

男性不妊と向き合う中で、精子の運動率や濃度を改善したいと漢方を取り入れたご夫婦の事例です。

検査結果で運動率が9%と低めだったご主人は、医師の診察を経て補中益気湯(ホチュウエッキトウ)とメコバラミン500を毎日服用。
1カ月後の再検査では、運動率が26%まで改善したそうです

漢方と栄養素を組み合わせたアプローチが、変化を後押ししたケースといえるでしょう。

前進運動率78.9%!漢方の効果を実感

人工授精(AIH)を受けたご夫婦の例です。

ご主人の精液検査では、洗浄前の前進運動率が35.6%と、前回の20%から大きく改善。洗浄後も前進運動率78.9%と良好な結果でした。

これは、医師から処方された薬と漢方を継続して服用した成果と感じているそうです
検査データからも改善が明確に現れており、日々の取り組みが確かな変化を生んだ好事例といえるでしょう。

【FAQ】精子の前進運動率を上げる漢方に関するよくある質問

最後に、「市販の漢方は使えるのか」「漢方は本当に効くのか」「効果はいつ現れるのか」という3つの疑問をQ&A形式で整理します。

迷いやすいポイントを簡潔に押さえながら、次に取るべき一歩のヒントや、体質との相性・使い分けの考え方にも触れます。

運動率を上げる漢方は市販でもOK?

市販の漢方エキス剤は手軽に購入できますが、医療用製剤に比べて有効成分の濃度が30〜40%程度に抑えられており、効果が限定的なこともあります

実際、男性不妊の相談に対応する漢方薬局では、「市販薬で運動率が改善しなかったが、処方を変えたことで改善した」という事例が複数報告されています。

また、体質(証)に合わない漢方を自己判断で飲み続けると、かえって逆効果になるおそれもあるため注意が必要です。

漢方の効果を最大限に引き出すには、問診・舌診・脈診などを行う専門家による処方を受けるほうが効果を引き出しやすくなります。

男性不妊に漢方が効果なしって本当?

男性不妊に漢方は効果がないという声もありますが、補中益気湯を用いた実験研究では、抗精子抗体の影響で運動率が低下した精子に対し、有意な改善効果が確認された例も報告されています。

また、一部の相談事例では、精子運動率42%未満だった男性が80%台まで改善したというケースも紹介されており、利用者全体の約8割で前進運動率の向上が見られたとしています。

こうした報告が重ねられていることから、体質が合えば、精子の運動機能をサポートする手段の1つとして、漢方は一定の効果が期待されるでしょう

出典:運動精子における補中益気湯の直接的効果|J-STAGE

効果はどれくらいで現れる?

漢方は即効型ではなく、体質が整うにつれてじわじわと効果が現れるのが特長です。

精子はおよそ72〜74日かけて成熟するため、数値への反映には少なくとも2〜3カ月かかるとされています。
実際、補中益気湯などを用いた研究でも、3カ月間の観察を経て改善が確認された例が報告されています。

体質や併用療法によって反応の速度は異なるため、まずは3カ月ほど継続し、検査で経過を確認しながら処方を見直す進め方が現実的です

出典:Male Reproductive Endocrinology|Merck Manual Professional

男性不妊の相談は北陸富山の「漢方薬房こうのとり」まで

妊活というと女性側のケアがクローズアップされがちですが、実際には男性側の体質改善も同じくらい重要です。WHO(世界保健機関)の調査では、不妊の原因の約半数は男性側にもあると報告されています。

さらに、西洋医学の検査で「問題なし」と言われた場合でも、自然妊娠に必要な精子の質に達していないケースは決して珍しくありません。こうした“見えにくい不調”に対しては、体全体のバランスから整える漢方が相性の良い選択肢となることがあります。

そのなかで漢方は、体質に合わせて腎(生殖力)・血流・ストレス調整など全身へアプローチでき、精子運動率の底上げをめざす補助療法として注目されています

さらに生活習慣の見直しやサプリメント、必要に応じて医療機関での治療を組み合わせることで、より効果的なサポートが期待できます。

北陸富山の「漢方薬房こうのとり」では、男性不妊に詳しい薬剤師が精液検査データや体質を丁寧に評価し、一人ひとりに最適な漢方をご提案しています

実績としては、

  • 精子運動率 8.7% → 78.3% に改善したケース(2024年)
  • 精子無力症(運動率42%未満)と診断された方のうち、こうのとり漢方+生活改善を74日以上継続した方16名中13名が運動率80%以上へ改善(2022年5月~2024年4月)

など、複数の改善例がございます。

精子の運動率でお悩みの方、自然に近い方法で体質を整えたい方は、まずはLINEや来店でお気軽にご相談ください。

男性側の取り組みも含めた夫婦での妊娠力アップを、こうのとりが全力でサポートいたします。

関連記事

  1. 妊活中の花粉症対策に効く漢方とは?副作用や選び方も解説

  2. 47歳で自然妊娠した人はいる?可能性に関するデータや体験談を紹介

  3. 前進運動率を上げる漢方とは?低い原因や上げる方法、漢方以外のアプローチも紹介