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芍薬甘草湯の不妊治療への効果とは?副作用や飲み方も解説

この記事を監修した人

京都薬科大学特命教授 兼 薬剤師
戸口 瑞之
漢方薬房こうのとり 代表

元富山総合薬局代表。現漢方薬房こうのとり代表・管理薬剤師 / 現京都薬科大学特命教授。
飲む量の加減のみ必要で万人に合う現代の中国漢方(中医)に大学病院時代から36年携わる。
漢方薬房こうのとりでは、直近3年で100人以上の方が目標を達成されています。

筋肉の痛みやこむら返りに使われるイメージの強い「芍薬甘草湯」ですが、実は排卵痛や月経痛の緩和を通じて、妊活をサポートする可能性があります。

この記事では、芍薬甘草湯の成分や作用機序を詳しく解説しながら、不妊への具体的な効果や実際の使用例をご紹介します。

副作用の有無やほかの漢方薬との併用、医師の見解まで、妊活中の方が気になる情報をお伝えしますので、妊活中の方はぜひ参考にしてください。

芍薬甘草湯とは、どんな漢方?

芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)は、芍薬と甘草の2つだけで構成されたシンプルな漢方薬です。筋肉や内臓のけいれんを鎮める作用があり、「傷寒論」という古典に記されています。

もともとは、こむら返りや月経痛、胃腸のけいれんなど、幅広い痛みに対して使われてきました。妊活中に処方されるケースでは、排卵期の痛みや骨盤内の違和感をやわらげる目的で使われることもあります

以下に、芍薬甘草湯の特徴を簡潔にまとめます。

芍薬甘草湯の特徴
項目内容
成分芍薬4.0g + 甘草4.0g(1日量)
作用・筋肉・子宮などの平滑筋の緊張をゆるめる
・鎮痛
・抗炎症
使用例・こむら返り
・月経痛
・排卵痛
・慢性的な下腹部の張り

現代の研究では、カルシウムの流入を抑えることで筋肉の過収縮を抑制し、痛みをやわらげる仕組みも報告されています。

妊活中の体の緊張をゆるめたいとき、注目される処方の1つです。

出典:一般用医薬品:芍薬甘草湯エキス細粒G「コタロー」|KEGG

妊活や不妊治療中の処方で期待される芍薬甘草湯の効果・効能

芍薬甘草湯は、不妊治療中の不調に対して処方されることがある漢方薬です。子宮や骨盤まわりの緊張をゆるめ、痛みや冷えをやわらげることで、治療を続けやすい体調に整えることを目的としています

漢方の分類では、芍薬甘草湯は「標治(ひょうち)」にあたる薬で、西洋医学的にいえば対症療法的な位置づけです。
つまり、原因そのものを根本から治すというよりも、今ある症状をやわらげて体の負担を軽くするために用いられます。

妊娠率そのものを直接高める根拠はまだ限られていますが、補助的なケアとして期待されている作用について、いくつかの側面からご紹介します。

筋けいれんや生理痛の軽減

芍薬甘草湯は、こむら返りや月経痛などの「キューッとくる痛み」に対して処方されることが多い漢方薬です。
特に、筋肉や子宮のけいれんをやわらげる働きがあり、「飲むとすぐにラクになる」と感じる人も少なくありません。

ある研究では、肝硬変の患者に対して使用したところ、足のつりの頻度や痛みの強さが明らかに減ったと報告されています。
この作用は、排卵期や月経前後に下腹部が張るようなタイプの不調にも応用されることがあります。

妊活中のストレスをやわらげる、ちょっとした支えになる漢方といえるでしょう。

出典:「こむらがえり」に使ってみよう|漢方スクエア

体内ホルモンへの作用の可能性

芍薬甘草湯には、女性ホルモンの環境をゆるやかに整えるような作用があるのではないか、と考えられています。

ある基礎研究では、去勢されたラットに芍薬甘草湯を与えたところ、副腎由来のエストロゲン(卵胞ホルモン)の血中濃度が上昇したという報告がありました。これは、エストロゲンの元となる物質(DHEA-S)の産生が促進されたことによると考えられています。

もちろん、ホルモン補充療法のような強い作用ではありませんが、PMS(月経前症候群)のつらさをやわらげる目的で併用されるケースもあるようです

治療中の不調を少しでも軽くしたいとき、補助的な役割として期待されている一面です。

出典:芍薬甘草湯の去勢メスラット血清エストロゲン値並びに培養副腎細胞に及ぼす影響:内因性エストロゲン増加の基礎検討|CiNii

子宮平滑筋の収縮を抑える可能性(基礎研究)

芍薬甘草湯には、子宮の収縮をゆるやかに抑える作用があるのではないか、という研究報告があります。
例えば、妊婦の子宮組織やラットを使った実験では、甘草に含まれる脂溶性の成分が、オキシトシンによる強い収縮をやわらげたとされています。

また、子宮内で痛みの原因となる物質(プロスタグランジン)の産生を減らす働きも示唆されており、こうした点から、けいれんをともなう月経痛などへの使用につながっていると考えられています。

ただし、これらは基礎研究段階の知見であり、人での効果を断言できるものではありません。

出典:Lipid-soluble fraction of Shakuyaku-kanzo-to inhibits myometrial contraction in pregnant women|National Library of Medicine

妊活における芍薬甘草湯の副作用は?

芍薬甘草湯を使う際に気をつけたいのが、甘草に含まれるグリチルリチン酸による副作用です

用法・用量を守れば比較的安全とされていますが、妊活中でも以下のような症状が現れることがあります。

  • 偽アルドステロン症(むくみ・血圧上昇・体重増加など)
  • 筋力低下・脱力感・不整脈(低カリウム血症が進行した場合)
  • ミオパチーや横紋筋融解症(まれに重症化)
  • 間質性肺炎(咳・息苦しさ・発熱など)
  • 肝機能障害・黄疸
  • 発疹や胃の不快感

国の医薬品安全機関(PMDA)によると、カリウムの異常や血圧の変動に関する副作用の報告が多く寄せられています。

妊活中の方も、服用中は血液検査や血圧の定期チェックを受け、気になる症状があれば早めに医師に相談しましょう。

出典:ツムラ芍薬甘草湯エキス顆粒(医療用)|独立行政法人 医薬品医療機器総合機構

妊活を意識した芍薬甘草湯の飲み方のポイント

芍薬甘草湯を妊活中に取り入れるときは、飲み方の工夫が大切です。

基本的な服用量を守りつつ、排卵や月経の周期に合わせたタイミングの調整や、ほかの薬との組み合わせに注意することで、安心して使い続けやすくなります。

継続して飲む

芍薬甘草湯は、1日7.5gを2〜3回に分けて、食前または食間に服用するのが基本です

妊活中に排卵痛や月経痛の緩和を目的として処方される場合は、痛みが続く間、決まった量を毎日継続して飲むケースが多いようです。
一時的な強い痛みには頓服で対応することもありますが、再発を防ぐためには継続して飲むことで効果が安定しやすいといわれています。

服用期間や量は、体調や症状に合わせて医師と相談しながら調整しましょう。

出典:ツムラ芍薬甘草湯エキス顆粒(医療用)|独立行政法人 医薬品医療機器総合機構

タイミングは「排卵前〜排卵期」などの周期を意識する

排卵痛や月経痛に芍薬甘草湯を使うときは、症状が出る少し前から服用を始めると、効果が感じやすくなるといわれています。

例えば、排卵期の不調がある方は、排卵が近づくタイミングに合わせて飲み始める方法が用いられることもあります。

月経痛が主な目的の場合も、予定日より前から飲み始めておくと、痛みがやわらぎやすいと感じる方が多いようです。

症状の出る時期は人によって異なるため、基礎体温や体調の変化に合わせてタイミングを工夫するとよいでしょう。

飲み合わせに注意する

芍薬甘草湯には、1日6gの甘草が含まれており、グリチルリチン酸を含む薬やほかの甘草入りの漢方・市販薬(特にかぜ薬)と一緒に使うと、副作用のリスクが高まることがあります。

特に注意したいのは、偽アルドステロン症(むくみ・血圧上昇・低カリウムなど)で、併用薬によってその危険性が高まる場合があります

また、ループ系やチアジド系の利尿薬もカリウムを減らす作用があるため、併用には注意が必要です。

サプリメントは基本的に併用できますが、腎機能に制限がある方や、複数の薬を服用している方は、あらかじめ医師に伝えておくと安心です。

出典:ツムラ芍薬甘草湯エキス顆粒(医療用)|独立行政法人 医薬品医療機器総合機構

妊活で芍薬甘草湯と併用または代用される漢方

芍薬甘草湯だけではカバーしきれない不調がある場合、症状や体質に応じて、ほかの漢方を組み合わせることもあります。

ただし、処方の組み合わせや使い分けには注意が必要です。

ここでは、補助的に併用される漢方や、同じ目的で用いられる処方を見ていきます。

併用できる漢方

芍薬甘草湯だけでは対応しきれない不調があるとき、体質や症状に合わせてほかの漢方薬を組み合わせることがあります。
以下は、妊活中によく併用される代表的な処方です。

それぞれ目的や適した体質が異なるため、どの漢方をどう使うかは一人ひとりで異なります
併用の際は、甘草を含む処方もあるため、作用や成分が重なる可能性があります。

服用する場合は、用量や期間を含めて、必ず医師や薬剤師に相談しましょう。

処方名対応する不調併用の目的・特徴
当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)冷え・むくみ・貧血傾向・血」の不足を補いながら巡りを整え、着床しやすい体づくりを助ける
・芍薬甘草湯でけいれんを抑え、当帰芍薬散で冷えを緩和する組み合わせがある
加味逍遙散(カミショウヨウサン)イライラ・PMS・自律神経のゆらぎ・精神的ストレスやホルモン変動による不調がある場合に
・痛みと心身の揺らぎを同時にケアする目的で併用されることがある
桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)うっ血感・月経過多・子宮内膜症・「瘀血(おけつ)」タイプの不調に
・芍薬甘草湯と併せて、骨盤内の巡りを整える例もある

代用される漢方

芍薬甘草湯が体質に合わない場合や、甘草を含む薬との併用に注意が必要なときは、似た目的で処方される別の漢方薬が検討されることがあります。

これらは「完全な代替」ではなく、体質や不調に応じて選ばれる選択肢です

服用や処方の選択は、体質・持病・併用薬などによって変わるため、実際の判断は医師の診察に基づいて行うようにしましょう。

処方名特徴と使われ方
芍薬甘草湯加姜黄(シャクヤクカンゾウトウカキョウオウ)・芍薬甘草湯にウコン(姜黄)を加えた処方
・消炎・鎮痛作用を高めたいときに用いられることがある
桂枝加薯蕷湯(ケイシカショヨトウ)・胃腸が弱く冷えやすい人に
・甘草の量が少なく、グリチルリチン酸の副作用が心配なケースで検討される
芍薬甘草附子湯(シャクヤクカンゾウブシトウ)・末端の冷えやしびれをともなうけいれんに用いられる
・附子の力で温める作用を補強する

芍薬甘草湯以外も効果的?妊娠力を高める漢方3選

ここでは体質や悩みに応じて選ばれる代表的な3つの処方を紹介します。

ただし、どの処方が合うかは体質や体調によって異なります。服用する際は、必ず医師や漢方薬局にご相談ください。

冷えと血流を整える温経湯(ウンケイトウ)

温経湯は、手足の冷えや月経不順、乾燥が気になる方に処方されることが多い漢方薬です。

体を内側から温め、血行を促すことで、子宮や卵巣まわりの巡りを整える作用が期待されています。
特に「冷え」と「血の滞り(瘀血)」が組み合わさって、排卵リズムが乱れやすい体質の方に適しているとされます

一部の臨床例では、温経湯の服用によって黄体形成ホルモン(LH)の値が安定し、排卵の回復につながったケースも報告されています。

血不足とむくみに当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)

当帰芍薬散は、貧血ぎみでめまいやむくみが気になる方に処方されることの多い漢方薬です。

この処方は「血(けつ)」を補いながら、水分代謝も整える作用があるため、着床しやすい体づくりを目指すサポート薬としても注目されています

体質的には、BMIが24以上の方や水分をため込みやすいタイプの方に合うとされる傾向があります。一部の症例では、当帰芍薬散を服用しながら妊活を継続した結果、妊娠に至ったケースも報告されています。

男性側もケアする補中益気湯(ホチュウエッキトウ)

補中益気湯は、疲れやすさや気力の低下が気になる方に処方される漢方薬で、男性側の妊活サポートにも活用されています。

精子の運動率や数の低下がみられるタイプに対しては、体力を補いながら、腎(じん)や気の不足を整える処方として位置づけられています

実際に、補中益気湯の服用によって精子の運動率が改善したケースも報告されており、夫婦で一緒に体質改善を進める際の一手として注目されています。

監修者コメント

漢方薬房こうのとりでは、補中益気湯を服用された方のうち、精子の運動率が大きく変化するケースは少ないものの、精子数の改善がみられることは多い傾向にあります。

 

【体験談】妊活や不妊治療中に芍薬甘草湯を処方された人の声

妊活の過程では、痛みや体調不良への対処が長期戦になることも少なくありません。

SNSでも、芍薬甘草湯を取り入れた方の声が多く見られます。

ここでは実際の投稿をもとに、3つの事例をご紹介します。
効果の感じ方や飲み続けた経過など、リアルな声は妊活中の方にとって参考になるかもしれません。

腺筋症による痛みが和らいだケース

「腺筋症で辛い時期が多かったが、芍薬甘草湯が思った以上に効いて驚いた」との声がありました。

不妊治療中でも服用でき、痛みが軽減されたことで前向きに治療を続けられたとされています。

体質改善を期待して飲み続けているケース

「当帰芍薬散と芍薬甘草湯を1年以上飲み続けている。効果ははっきりしないが、少しでも体質改善につながればと思う」との体験談も見られます。

実際に、漢方薬だけで妊娠・出産に至った例も身近で報告されています

 

監修者コメント

BMIが20以下の方の場合、当帰芍薬散が体質に合わないことがあり、逆に体調を崩すおそれがあるので仕様は控えてください。

ホルモン値が改善したケース

「半年以上、芍薬甘草湯を飲んでいたら黄体ホルモンの値が基準値まで下がった」と話す方もいました。

不妊治療を続けながら取り入れられ、数値改善を実感したことが励みになったそうです。

【FAQ】芍薬甘草湯と不妊治療の関係に関するよくある質問

ここでは、芍薬甘草湯に関する素朴な疑問を中心に、医療機関の見解と実際のポイントをわかりやすく整理しました。

そもそも妊活中に漢方を飲んでもよい?

婦人科や漢方専門の医師のもとであれば、排卵誘発剤やホルモン治療と併用されるケースも一般的にあります。

ただし、自己判断で長く飲み続けるのは、低カリウム血症などの副作用につながることもあります。服用する場合は、処方した医師と用量や期間についてしっかり相談しながら使うことが大前提です。

妊活中の漢方は市販薬でもよい?

市販の芍薬甘草湯製剤(エキス粒・エキス顆粒)は、医療用より用量が少なく、配合比が異なる場合もあります。

作用と安全性のデータは医療用を基準に蓄積されているため、妊活中は、安全性と効果の面から、医療用を選ぶのが望ましいとされています

薬局で購入する場合も、薬剤師に妊活中であることを伝えるようにしましょう。

不妊治療の漢方は保険適用外?

芍薬甘草湯(ツムラ68番・クラシエ60番など)は、保険が使える医療用漢方薬です
不妊治療の一環として、医師の判断で保険診療の範囲内で処方されることがあります。

ただし、自由診療のクリニックでは自己負担になる場合もあるため、事前に費用について確認しておきましょう。

不妊治療中の漢方の相談は北陸富山の「漢方薬房こうのとり」まで

こむら返りや排卵痛の対策に用いられる芍薬甘草湯ですが、用量や併用薬によっては副作用のリスクがあります。

甘草に含まれるグリチルリチン酸の影響で、偽アルドステロン症(低カリウム血症、むくみ、血圧上昇など)を起こす場合があるため注意が必要です。

芍薬甘草湯は、今ある痛みやけいれんを一時的にやわらげる「対症療法(標治)」として使われる漢方薬であり、根本から原因を取り除くタイプではありません。

一方、北陸・富山の「漢方薬房こうのとり」では、現代中国の最先端理論に基づく漢方を用いて、生理痛や排卵痛の原因となる瘀血(おけつ)※血流の滞りを根本から整えるサポートを行っています

そのため、継続的な服用によって症状そのものが起こらなくなる方も多く、漢方を中止した後も痛みが再発しないケースが見られます。

妊活中の漢方は、専門家のサポートを受けながら安全に続けることが大切です。

こうのとりでは、婦人科漢方に詳しい薬剤師と登録販売者が、基礎体温表や症状の経過を踏まえて丁寧にサポートしています

来店が難しい方にはオンライン相談も対応しており、費用も事前にしっかりご説明しますので、妊活に関するお悩みを一つずつ解決していきましょう。

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