黄体機能不全とは、排卵後にできる黄体からの黄体ホルモン(プロゲステロン)が、何かしらの原因で十分に分泌されなくなっている状態です。
黄体機能不全になると、月経周期が不規則になったり、不正出血が起こったり、妊娠しにくくなったりする場合があります。
この記事では黄体機能不全と妊娠との関係、改善方法をわかりやすく解説するので、ぜひ最後までご覧くださいね。
黄体機能不全の主な原因
黄体機能不全はなぜ起きるのか、その原因をみていきましょう。
実は、はっきりとした原因は、まだ解明されていません。ただ可能性としては、以下のことが指摘されています。
原因 | メカニズム |
---|---|
ホルモンバランスの乱れ | 卵巣を刺激する卵胞刺激ホルモン(FSH)や黄体化ホルモン(LH)、性腺刺激ホルモン(GnRH)などがうまく分泌されず、バランスが乱れるケースです。この場合、卵巣が十分に機能せず、黄体の形成や黄体ホルモンの分泌に障害が生じる可能性があります。 |
ストレス、生活習慣や食生活の乱れ | ホルモンバランスの乱れを引き起こします。 |
高プロラクチン血症 | プロラクチンは脳下垂体から分泌されるホルモンで、母乳をつくるために欠かせないホルモンです。しかし、出産していないのにプロラクチンの数値が高い状態が続くことがあり、黄体機能不全の原因とされています。 |
卵巣の損傷や機能低下 | 炎症や手術などによる卵巣の損傷、年齢や遺伝的な要因による卵巣の機能低下がみられると、黄体形成や黄体ホルモン分泌に障害が生じることがあります。 |
特定の疾患や症候群 | 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)や甲状腺機能障害など、特定の疾患や症候群が、黄体機能不全を引き起こすこともあります。 |
薬剤による影響 | 抗がん剤治療や放射線治療で卵巣機能が低下すると、黄体機能にも影響の出る可能性があります。 |
次に、黄体機能不全の症状も確認しておきましょう。
一般的には、以下のような症状がみられます。
- 月経周期が不規則、または無月経である
- 基礎体温の高温期が10日に満たない
- 妊娠困難がある、または流産を繰り返す
- 不正出血や過剰出血がある
- 基礎体温の高温相が短い
- お腹の張りがある
- 下腹部の痛みがある
これらの症状のいずれか、あるいは複数が当てはまる場合は、黄体機能不全が疑われます。早めに医療機関を受診しましょう。
参考までに、黄体機能不全の検査や診断方法をまとめておきます。
方法 | 詳細 |
---|---|
基礎体温チャートの作成 | 黄体機能の状況を確認するために、毎朝、起床後に基礎体温を測定し、チャートに記録します。 |
排卵検査 | 薬を用いて、排卵が起きているかどうかの確認をします。 |
ホルモン検査 | 血液を採取し、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体化ホルモン(LH)、黄体期の黄体ホルモン(プロゲステロン)のレベルを確認します。 |
子宮内膜検査 | 子宮内膜組織を採取して、子宮内膜の状態をみる検査です。 |
超音波検査 | 超音波により、卵巣の様子や卵胞の成長、黄体の形成を観察します。 |
出典:
Current clinical irrelevance of luteal phase deficiency: a committee opinion|Fertility and Sterility
“黄体機能不全”の 病態に関する研究―ホルモン反応性よりみた子宮内膜の機能形態学的検討―|中野昌芳
黄体機能不全の改善方法は?
黄体機能不全による症状を改善するためには、さまざまな治療アプローチが考えられます。代表的な手段として以下が挙げられます。
- プロゲステロン補充療法
- ホルモンバランスの調整
- 排卵誘発剤の投与
- 原因疾患の治療
- 漢方による体質改善
- 手術
どの治療を選択するかは、個々の症状や原因によって異なります。黄体機能不全と診断された場合は、必ず医師に相談し、自分に適した治療法を見つけることが大切です。
参考:そもそも、黄体機能不全は自分で治せる?
年齢が若い場合は、ストレスや生活習慣、食生活の乱れを改善することにより自然に治癒する可能性はあります。
しかし、複数の原因が考えられるケースや長期にわたって黄体機能不全が続いている場合は、早めに漢方での体質改善といった治療を始めたほうがよいでしょう。
なお、「漢方は副作用がなく安全」という認識が広がっているようですが、漢方にも副作用はありますし、体質と合っていなければ効果は期待できません。自己判断による漢方の使用は、危険なこともあります。漢方の専門家に相談して、指示を仰ぐようにしましょう。
出典:“黄体機能不全”の 病態に関する研究―ホルモン反応性よりみた子宮内膜の機能形態学的検討―|中野昌芳
【一覧】黄体機能不全に効く漢方は?
前述したように、黄体機能不全の原因ははっきりとせず、治療法もさまざまあるというのが現状です。
そんな中、漢方では次のようなアプローチで黄体機能不全の改善を目指します。
- 骨盤内の血流を改善し、栄養を骨盤内、卵巣にも行きわたらせる。
- 卵巣機能を高め、卵胞の発育を促す。
- 自律神経を整え、ホルモンバランスを改善する。
体質によって選ぶ漢方は異なりますが、代表的な漢方を3つ紹介します。
漢方名 | 効果・効能 | 市販販売の有無 |
---|---|---|
桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン) | 骨盤内の血流を改善する | 有 |
八味地黄丸(ハチミジオウガン) | 卵巣機能を高める | 有 |
加味逍遙散(カミショウヨウサン) | 自律神経を整える | 有 |
桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)
水分の偏りや血流を改善し、全身に栄養を行きわたらせる効果のある漢方です。
体を温め、血管を広げる生薬、余分な水分の排泄を促す生薬が配合されています。
服用することで骨盤内の血流がよくなれば、黄体機能不全への効果も期待できるでしょう。
八味地黄丸(ハチミジオウガン)
「八味地黄丸」は、卵巣機能改善をサポートする働きのある漢方です。卵胞の発育が促されれば、十分な黄体ホルモンの分泌も期待できます。
加味逍遙散(カミショウヨウサン)
月経前症候群や更年期のホットフラッシュの治療など、婦人科で用いられる頻度の高い漢方です。
自律神経に働きかける生薬、気持ちを安定させる生薬、血流を改善し栄養を巡らせる生薬、消化吸収を改善する生薬などが配合されています。
ストレスが軽減されてホルモンバランスが整えば、黄体機能不全への効果も期待できるでしょう。
漢方薬房こうのとりでは、上記の漢方薬は使用していません。これらの処方は古く、現代中国ではほとんど使用されていないためです。
出典:
随証漢方療法で生児を獲得した卵巣機能不全不妊症100例の漢方医学的ならびに西洋医学的解析|假野 隆司、土方 康世、清水 正彦、河田佳代子、日笠 久美、後山 尚久
体外受精の段階に合わせ決まったパターンで漢方薬を投与した20症例|高橋 浩子、日笠 久美、鎌田 周作、鎌田ゆかり
漢方以外に考えられる黄体機能不全改善のための取り組み
黄体機能不全は、食べ物やサプリメント、運動でも改善できるといわれています。
詳しくみていきましょう。
食べ物(食生活)
栄養バランスのとれた食事を心がけましょう。
中でもビタミンB群(B1、B2、B6、B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチンの8種)は、過剰に摂取した分は尿中に排泄されてしまうため、少量でもよいので、毎日とりたい栄養素のひとつです。
特にビタミンB6は、ホルモンバランスを整えたり、黄体機能を改善したりする作用があるといわれています。赤身の魚や脂身の少ない肉類、バナナやパプリカなどに多く含まれているので、積極的にとるとよいでしょう。
もうひとつ、意識して摂取しないと不足しがちな栄養素がミネラルです。特に亜鉛は、卵胞刺激ホルモンや黄体形成ホルモンにも関与する栄養素で、不足すると黄体機能にも影響が及びます。亜鉛を多く含む牡蠣、赤身の肉、豆類などで、亜鉛を補給しましょう。
サプリメント
ホルモンバランスの乱れが黄体機能不全につながっていることもあるので、女性ホルモンを整えるサプリメントを使用することも方法の1つです。
特に現代人は、食事からの摂取のみではビタミンやミネラルが不足しがちだといわれています。
以下にいくつかサプリメントを紹介するので、参考にしてください。
成分 | 効果 |
---|---|
大豆イソフラボン | 女性ホルモンに似た働きをします。 |
ビタミンE | 抗酸化作用があり、血行促進やホルモンバランスの調整に効果が期待できます。 |
ビタミンB6 | ホルモンバランスの調整をします。 |
亜鉛 | 卵胞刺激ホルモン(FSH)や黄体形成ホルモン(LH)の働きを高めます。 |
葉酸 | 子宮内膜の保護作用があります。 |
運動
適度な運動はストレスを解消し、体調を整える効果があります。無理のない範囲で、積極的に取り組んでみましょう。具体例をいくつか紹介します。
- 有酸素運動:Youtube動画を見ながらの全身ストレッチ、1日30分程度のウォーキング、ゆっくりペースでのジョギング、サイクリングなどをおこないましょう。
- 筋力トレーニング:下半身の筋肉を鍛えると、骨盤周りの血液循環が改善できます。
- ストレスを軽減するための運動:ヨガ、フラダンスなど、リラックス効果のある運動がおすすめです。
- 日常的な身体活動を増やす:デスクワークや座りっぱなしの生活を送っていると、体の血液循環が悪くなります。エスカレーターやエレベーターではなく階段を使う、散歩をする、デスクワークを1時間したらストレッチをするなどの工夫をして、体を動かすようにしましょう。
出典:
女子大学生の月経周期安定化の要因の検討 ~初経経過年数に着目して~|近藤 渚、小川睦美、戸谷誠之、髙尾哲也
Menstrual Cycle Patterns and the Prevalence of Premenstrual Syndrome and Polycystic Ovary Syndrome in Korean Young Adult Women|National Library of Medicine
最新版 医療従事者のためのサプリメント・機能性食品事典
【事例】黄体機能不全が治った・妊娠できた人
黄体機能不全が治った人、黄体機能不全があっても妊娠できた人はいるのでしょうか?
X(旧Twitter)の口コミから、「黄体機能不全が治った、妊娠できた」との声を集めてみました。
「食事改善によって治った」という報告や「治療で改善し、出産できた」という報告もあります。黄体機能不全の原因や程度は人それぞれですが、自分なりの取り組みで成果を出している人もいることがわかりますね。
黄体機能不全を治す漢方処方なら「漢方薬房こうのとり」にご相談ください◎
黄体機能不全の原因ははっきりわかっていませんが、改善に向けた治療や取り組みは、多々あります。
妊娠力を高める効果があるとされる漢方の利用も、その1つといえるでしょう。漢方が目指すのは、体全体の不調に着目し、その不調にアプローチして体調を整え、黄体機能不全の改善につなげることです。
ただし漢方は、自分の体質や体調に合ったものを選んで服用しないと効果がありません。自分の体質を自分で判断するのは、とても難しいことです。漢方を利用するのであれば、きちんと成果を出すためにも、専門家に相談して指示を仰ぎましょう。
北陸富山の「漢方薬房こうのとり」では、妊活に関する漢方の専門家が対応します。これまでにも多くの妊活をサポート実績があります。
黄体機能不全と診断された事例をご紹介します。このケースは過労が主な原因ですが、よく似た事例が多く見られます。
37歳の女性が、こうのとり漢方を10か月使用して妊娠し、1人目の男児を無事に出産しました。このときは黄体機能不全の症状はありませんでした。
出産後7か月で生理が再開し(比較的早い方だと思われます)、育児休暇中に2人目の妊活をスタートしました。育休中は基礎体温が安定しており、すぐに妊娠できると考えられましたが、仕事復帰後、基礎体温の高温期がなくなり、無排卵月経で黄体機能不全と診断されました。
仕事と育児の負担が重なり、疲労が強まったため、1年間妊活を中断。その後、40歳前に2人目を希望して再びこうのとり漢方を使用しましたが、高温期の日数は改善しませんでした。
漢方を変更した結果、高温期が安定し始めましたが、過労の影響は続いていました。特に旦那さんの帰宅が遅く、保育園の迎えや育児をすべて1人でこなす日々が続き、育児と仕事の負担が重なったことが黄体機能不全の主な原因と考えられます。
その後、過労の改善も目的とした漢方に切り替え、7か月後に人工授精で妊娠判定が陽性となりました。出産時には40歳を迎える見込みです。
漢方薬房こうのとりでは、遠方の場合はオンライン相談も可能です。黄体機能不全に悩んでいる場合は、ぜひお問い合わせください。