体外受精を続けていると「成功率はどれくらいなのだろう?回数を重ねるごとに成功率は変わるのだろうか」と気になるかもしれません。また「自然妊娠率は若い年齢の方が高い」といわれますが、体外受精でもそうなのでしょうか。
体外受精をはじめとした不妊治療には多額の費用がかかりますし、「できるだけ早く妊娠したい」と望むものです。できるだけ体外受精の成功率を高めるには何ができるのでしょうか。
今回は、体外受精の成功率を回数別や年齢別、男性不妊などのケースに分けて解説します。また、体外受精の成功率を上げるためにできることも紹介するので、ぜひ参考にしてくださいね。
体外受精の成功率は?
体外受精の成功率(胚移植1回あたりの出産率)は、1回あたり約15~20%といわれています。胚移植1回あたりの妊娠率は31.9%ですが、約20%の確率で流産するといわれているため、成功率は低下しているのです。
人工授精を受ける人の年齢は39~42歳が多いですが、妊娠率は35歳前後から低下してしまいます。年齢によって体外受精の成功率が大きく異なるため、できるだけ若い年齢で体外受精をおこなうことが望まれます。
出典:2022年体外受精・胚移植等の臨床実施成績|日本産婦人科学会
体外受精はロング法とショート法のどちらが成功率が高い?
結論として、ロング法の方がショート法よりも体外受精の成功率は高いといわれています。
体外受精では、あらかじめ卵子を採卵する必要があり、できるだけ多くの卵子を採取するために、卵巣を刺激し卵子の発育をうながす卵巣刺激がおこなわれます。
卵巣刺激には次の3通りあります。
方法 | 概要 |
---|---|
完全自然周期法 | 排卵誘発剤をいっさい用いずに、自然発育した卵胞を採卵する方法。卵巣機能が著しく低下している人に適している。 |
低刺激法 | 内服の排卵誘発剤を併用し、月経時からしばらくの間はFSH/HMG注射(※1)をおこなわないか、おこなっても1日おきであるなど、注射の回数を減らした方法 |
高刺激法 | 連日排卵誘発剤の注射をおこなう方法。アゴニスト製剤(※2)の点鼻薬とFSH/HMG注射を使い自然排卵を抑えながら、複数の卵子を育てる。 |
※1:FSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体化ホルモン)を体外から注射する
※2:長期間の使用で脳下垂体の卵巣刺激ホルモンの分泌を抑制するため、卵が未熟なうちに排卵してしまわないように、排卵をコントロールする目的で使用する
ショート法とロング法は、高刺激法の種類です。ほかにも、アンタゴニスト法があります。
高刺激法の種類 | 概要 |
---|---|
ショート法 | アゴニスト製剤の点鼻薬を採卵周期の月経開始から使う方法。月経3日目から9日間FSH/HMG注射をおこなう。 |
ロング法 | アゴニスト製剤の点鼻薬を前周期から長く使う方法。月経3日目から9日間FSH/HMG注射をおこなう。 |
アンタゴニスト法 | 月経3日目からFSH/HMG注射やクロミフェンやレトロゾールの服用で卵子を発育させ、ある程度大きくなったらアンタゴニスト製剤を注射し排卵を抑える方法 |
ロング法は卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクはありますが、ショート法よりも質の高い卵子を育てやすいメリットがあるため、ロング法の方が体外受精の成功率が高いといわれます。
しかし、卵巣機能が低下している人や高齢の人はほかの方法が選択される可能性があることに留意しましょう。
出典:
注射による排卵誘発Q&A|筑波学園病院
体外受精のながれ|新百合ヶ丘総合病院産婦人科リプロダクションセンター
海外での体外受精の成功率
海外では、日本よりも体外受精の成功率が高いといわれています。
アメリカの疾病対策予防センター(CDC)が公表している生殖補助医療の治療実績と、日本産婦人科学会が出しているデータを比較したところ、妊娠率はアメリカだと28.7%、日本だと21.1%です。
出産率をみると、アメリカは23.6%であるのに対し、日本は13.5%まで落ち込んでいます。治療を受ける年齢は、アメリカでは35歳未満が最も多いですが、日本は30代後半以降が多いです。
またアメリカなどの海外先進国では、基礎体温によって体外受精の可否を決定しています。しかし、日本ではそういった制限がなく、採卵時で移植できないといわれてしまうケースが6割みられます。
日本では治療を受ける人数は多いですが、アメリカよりも体外受精の成功率や生産率(出産率のこと)が低いのです。
出典:
米国の不妊治療の現状とは?-米国の生産性が日本と比べて10.1%ポイントも高く、35歳未満での治療が12.2%ポイントも高い特徴-|ニッセイ基礎研究所
日本の「妊活」 不都合な真実|鳥取大学医学部付属病院
【回数別】体外受精の成功率
体外受精の成功率は、回数を重ねるごとに妊娠する人の割合が高まります。4回までに妊娠する割合は90%といわれています。
もし5回以上体外受精をおこなっても妊娠できない場合は、子宮や卵子、精子に異常がある可能性が高いでしょう。顕微授精へのステップアップをすすめられることもあります。
【年齢別】体外受精の成功率
体外受精の成功率は、年齢によって大きく変わります。ここからは、年齢別に成功率についてみていきましょう。
20代~30代前半の体外受精の成功率
20~30代前半の体外受精による妊娠率は40〜50%、出産率は約20%です。体外受精の成功率が最も高い年代になります。
30代後半の体外受精の成功率
30代後半の体外受精による妊娠率は25~30%、出産率は10~20%です。30代後半になると卵子の質の低下がみられるため、妊娠できる確率が低下します。また流産率も高まるため、出産率の低下がみられます。
40代以降の体外受精の成功率
40代以降の体外受精による妊娠率は10~20%、出産率は10%未満です。流産率が30~40%と、年齢を重ねる度に高まります。
また40歳を超えると、卵巣刺激をおこなっても卵子が成長せず、採卵にいたらないこともあります。クリニックによっては、45歳以上の体外受精をおこなわないケースもみられますよ。
2023.10.05
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出典:
O-27 女性年齢45歳以上の患者にARTは有効か?|日本IVF学会
2021年体外受精・胚移植等の臨床実施成績|日本産婦人科学会
【2人目】体外受精の成功率
「1人目妊娠できたから、2人目の体外受精での成功率も高いのではないか」と考える方もいますが、実際は1人目と2人目の体外受精での成功率に差はありません。今の年齢による体外受精の成功率を参照してください。
むしろ1人目を出産したときよりも年齢を重ねているため、1人目よりも妊娠率・出産率が低下する可能性が高いことに留意しましょう。
【男性不妊】体外受精の成功率
男性不妊によっても、体外受精の成功率が低下する可能性は否定できません。
男性不妊には、精子の運動率や正常形態率、濃度などの異常があり、年齢を重ねるにつれて精子の運動率や正常形態率は低下すると報告されています。
精子の正常形態率の低下によって、遺伝子異常による影響が現れることが考えられます。また精子の運動率が低下していると、卵子の中に入り込む力が弱いため、成功率が低下するのです。
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出典:
原因は男性にもある?! 男性不妊治療の今|サワイ健康推進課
生殖医療Q&A Q25. 男性の加齢は不妊症・流産にどんな影響を与えるのですか?|日本生殖医学会
体外受精には精子の運動率が重要なの?|六本木レディースクリニック
【その他】体外受精の成功率
年齢や回数以外にも、体外受精の成功率に影響を及ぼす因子はあるのでしょうか。また、体外受精でも成功しない場合、顕微授精へのステップアップも検討されますが、顕微授精の成功率はどれほどでしょうか。
多嚢胞性卵巣症候群における体外受精の成功率
多嚢胞性卵巣症候群の人はそうでない人と比べて、最大20%妊娠率が低いといわれています。流産率も高い傾向にあり、出産率も低いです。
正常胚を移植したとき、多嚢胞性卵巣症候群ではそうでない場合と比べて初期流産が増加したという報告や、血中の男性ホルモン濃度の上昇によって流産率が高まるという考察があります。
また、多嚢胞性卵巣症候群かつBMI高値やインスリン抵抗性がある場合は、不妊治療における流産率が高まるリスクもあるため、減量やインスリン抵抗性の治療がおこなわれます。
出典:
High BMI and Insulin Resistance Are Risk Factors for Spontaneous Abortion in Patients With Polycystic Ovary Syndrome Undergoing Assisted Reproductive Treatment: A Systematic Review and Meta-Analysis|Front Endocrinol (Lausanne)
産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2020|日本産科婦人科学会
顕微授精の成功率
原因不明の不妊があり、人工授精までの治療でも妊娠しない場合は、体外受精が選択されます。体外受精を開始して初めて、卵子の質や受精障害の有無を発見できるケースもあるのです。
卵子側の受精障害や精子の運動率の低下、精子濃度の低下がみられる場合には顕微授精が選択されます。
胚移植1回あたりの顕微授精による妊娠率は、35歳では32%、40歳では18%、45歳では4%です。また出生率は、35歳では25%、40歳では11%、45歳では1%未満です。
また、体外受精や顕微授精の成功率は、子宮外妊娠の発生でも低下します。体外受精における子宮外妊娠の発生率は2.6%、顕微授精では1.3%と、自然妊娠(1%)と比較して高いです。
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出典:
2021年体外受精・胚移植等の臨床実施成績|日本産婦人科学会
ARTにおける子宮外妊娠の発生と胚盤胞移植|日本産婦人科学会誌
体外受精の成功率を上げる方法はある?
体外受精の成功率を上げるためには、妊娠率を高めて流産率を下げる工夫が必要です。
体外受精の成功率を上げる方法は、次のとおりです。
目的 | 方法 |
---|---|
卵子や精子の質を高める | ・栄養価の高い食事 ・禁酒・禁煙、ストレスが溜まる生活習慣の改善 ・良質な睡眠の確保 ・卵子や精子の質を高める漢方の服用 ・BMIを20~24に保つ |
着床率を上げる | ・子宮筋腫や子宮内膜症などの着床を妨げる病気の治療 ・温活による冷え性の改善 ・ビタミンDとEの摂取 ・子宮内膜を育てる漢方の服用 |
流産率を下げる | ・妊娠前からの葉酸の摂取 ・流産を予防する漢方の服用 |
アメリカでは、タンパク質を増やし炭水化物を控えた食生活によって、体外受精を受ける女性の妊孕性が高まったと報告されています。男女ともにタンパク質の量を意識した栄養価の高い食事を心がけることで、卵子や精子の質の改善が期待できます。
またストレス発散や血流改善には、ウォーキングやストレッチなどの運動が効果的です。一方で、激しい運動はかえって不妊につながるおそれがあるため、男女ともに控えましょう。
さらに漢方による体質改善は、妊活から出産までのすべての段階で効果的です。自分に合う漢方を服用することで、妊娠率および出産率の上昇、流産率の低下が期待できます。
西洋医学では「患者の自己責任なので、クリニックではどうにもできない」といわれてしまうことも、漢方では改善が期待できます。妊娠する前と後では服用できる漢方が異なるため、専門家のアドバイスを元に服用してください。
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出典:
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体外受精の成否に関するお悩みは「漢方薬房こうのとり」にご相談ください◎
体外受精の成功率には、年齢が大きくかかわっています。なぜなら卵子や精子の質、卵巣機能、流産しやすさなどは年齢の影響を大きく受けるからです。
加齢による影響をなくすことは難しいですが、生活習慣の改善や漢方の服用によって成功率が上がることが期待できます。
西洋医学では患者の責任といわれてしまう卵子の質や子宮内膜の薄さなどの問題も、漢方によって改善がみられることもあります。
市販でも漢方を購入できますが、原料価格の高騰などで成分量が減らされており、期待通りの効果が得られないことも考えられるため、漢方薬局で処方してもらいましょう。
2022年4月にART(体外受精や顕微授精)および人工授精(年齢制限なし)が保険適用となって以降、「漢方薬房こうのとり」では、ARTと漢方を併用する方の割合が5~7割に増加しました(2022年3月までは4~5.5割)。
体外受精の成功率については、「ARTデータブック最新」と検索すると、公益社団法人日本産科婦人科学会が2024年8月30日に発表した2022年のデータが確認できます。
このデータによると、生産率(出産率)は35歳を超えると20%を下回り、全年齢平均では13.8%です。つまり、1回の体外受精で赤ちゃんを授かる確率は1割強に過ぎません。これが「ステップアップ」の結果です。
「ステップアップを勧められたのに、この確率?」と驚く方が多く、中には3~5割の成功率を想像していたと話される方もいます。
不妊に悩む方は、まずこの現実を受け入れることから始め、成功率を上げるために何ができるのかを一緒に考えていきましょう。
漢方薬房こうのとりのホームページを見ていただくと、成功率を上げるためのポイントがわかります。漢方医学的に重要な4つのポイントと、西洋医学的に必要な2つの検査をクリアすれば、体外受精の成功率を80%以上に高めることができます。
北陸富山の漢方薬房こうのとりでは、不妊や漢方の専門家が、一人ひとりの体質や症状に合わせた漢方を提案します。対面相談はもちろん、オンライン相談にも対応しています。体外受精の成功率を上げたい方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。