妊活中の春先、「薬を飲むと赤ちゃんに影響があるかも……」と、花粉症の薬に不安を感じていませんか?症状を我慢し続けると、鼻水やくしゃみで睡眠不足になったり、ストレスが溜まったりして、かえって妊活に悪影響を及ぼすおそれもあります。
この記事では、花粉症と妊活を両立したい方に向けて、漢方という選択肢を詳しく解説します。無理なく体を整え、前向きに妊活へ取り組むためのヒントとしてご活用ください。
妊活中でも花粉症に対して飲める薬・飲めない薬
妊活中は、日々の体調管理だけでなく、薬の選び方にも気を配る必要があります。
特に花粉症がつらい季節は、「市販薬で少しでも楽になりたい」と思う一方で、「妊活に影響があるのでは……」と不安になる方も多いのではないでしょうか。
インターネット上にはさまざまな情報があふれていますが、正しい判断のためには信頼できる根拠を確認することが大切です。
この章では、妊活中の女性が比較的安心して使用できる薬、反対に避けたい薬について、代表的な市販薬・処方薬をもとに一覧で整理しました。
また、ご本人だけでなく、パートナーの薬が妊活に与える影響にも軽く触れています。お二人で妊娠を目指すうえで、安心できる選択ができるよう参考にしてください。
| 薬名(商品) | 一般名 | 妊活中可否 |
|---|---|---|
| アレグラ | フェキソフェナジン塩酸塩 | ◎ |
| アレジオン | エピナスチン塩酸塩 | ◎ |
| ビラノア | ビラスチン | ◎ |
| コンサータ | メチルフェニデート塩酸塩 | △ |
| 全身性ステロイド | プレドニゾロン等 | △ |
| ディレグラ | フェキソフェナジン塩酸塩 塩酸プソイドエフェドリン | △ |
| ロキソニン | ロキソプロフェンナトリウム水和物 | × |
| セルテクト | オキサトミド | × |
妊活中は使用できる薬に制限がある
妊活期には、薬の選び方に細心の注意を払う必要があります。
特に排卵期や着床期は、体が繊細に変化しているタイミングのため、全身に強く作用する薬はできるだけ避けるのが基本です。
例えば、点鼻薬や点眼薬に含まれるステロイド(例:フルチカゾンなど)は体内への吸収が少ないことから、短期間であれば使用が検討されます。
経口薬を使う場合は、胎盤を通りにくく、奇形の報告がない成分を、最小限の用量で使用することが求められます。
妊活中に飲めない薬
妊活中に避けたいのは、子宮収縮や血管収縮作用をもつ薬、ホルモン環境を乱すおそれのある成分です。
例えば、市販されているディレグラ(プソイドエフェドリン配合)は血管収縮作用が強く、胎盤の血流を低下させる可能性が指摘されています。
添付文書でも「有益性が危険性を上回る場合のみ投与」と明記されています。
また、ロキソニンSなどのNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は、排卵の抑制や胎児の動脈管収縮といった影響が報告されており、妊活中には避けるのが無難です。

特に安定期以降は禁忌です。
このような成分を含む市販薬や複合感冒薬は、自己判断での服用を避け、事前に医師や薬剤師に相談することが大切です。
出典:ディレグラ配合錠|独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
妊活中に飲める薬
比較的安全とされているのは、第2世代抗ヒスタミン薬です。アレグラ(フェキソフェナジン)、アレジオン(エピナスチン)、ビラノア(ビラスチン)は、先天異常との関連が報告されておらず、妊活中でも使いやすいとされています。
また、モメタゾンやフルチカゾンといった点鼻ステロイドは、全身への移行が少ないため、症状が局所に限られる場合には、選択肢となることがあります。
いずれの場合も、「妊活中でも使える薬かどうか」を確認し、自己判断せずに医師や薬剤師に相談することが大切です。
妊活中の花粉症に対する漢方薬のアプローチ
妊活期はホルモンバランスが繊細に変化するため、西洋薬に限らず、漢方薬を選ぶ際にも慎重な判断が求められます。
ここでは、妊活中の女性が花粉症対策として漢方を取り入れる際に押さえておきたいポイントを、3つの観点から整理します。
体調や服用歴によって適切な処方は異なるため、自己判断は避け、必ず専門家に相談したうえで参考にしてください。
小青竜湯は妊活中に避けたい?注意すべき理由とは
小青竜湯(ショウセイリュウトウ)は、麻黄(マオウ)を含む漢方で、体内の余分な水分を発散させる作用があります。
一見、花粉症の鼻水対策に効果がありそうに感じますが、麻黄に含まれるエフェドリン類には血管収縮作用があり、胎盤への血流を下げるリスクが指摘されています。そのため、小青竜湯は妊婦禁忌(妊娠中の服用を避けるべき)漢方に分類されています。
実際に、「小青竜湯 妊娠中期」「小青竜湯 妊娠初期 飲んでしまった」といった検索も多く見られ、不安を感じる方が多いことがうかがえます。
妊娠が確定していない妊活中の段階でも、排卵や着床に影響を及ぼす可能性が否定できないため、自己判断での服用は避けましょう。
妊活中でも使われることがある漢方薬の例
妊活中に検討されやすいのは、子宮の収縮を促す作用や、強い発汗作用をもたない処方です。
例えば、小建中湯(ショウケンチュウトウ)や補中益気湯(ホチュウエッキトウ)は、体力の低下やストレスが気になるタイプに用いられることがあります。
なお、当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)は妊活中の処方には適していません。
妊娠が確定してからの安胎目的では用いられるケースもありますが、いずれにせよ体質や既往歴によって適応が変わるため、自己判断は避け、必ず専門家にご相談ください。
妊活中の漢方の選び方(花粉症のタイプ別)
妊活中に花粉症を改善する漢方選びでは、症状に応じた処方の使い分けが大切です。
まず、水のような鼻水や寒気がある場合は、体の冷えが原因となっていることがあります。このタイプには、体を温めて免疫の過剰反応を抑える桂枝加朮附湯(ケイシカジュツブトウ)が使われます。
一方、鼻づまりやほてり・のぼせが目立つ方には、こもった熱を冷まして通気を良くする辛夷清肺湯(シンイセイハイトウ)が選ばれることがあります。
また、疲れやすくストレスを感じやすい方には、気血の巡りを整え、体力を高める働きのある補中益気湯(ホチュウエッキトウ)が適しています。
いずれの場合も、妊活中であることを医師に伝え、用量や期間を適切に管理することが重要です。
花粉症の人の妊活に対する漢方薬のアプローチ
花粉症の体質を抱えたまま妊活を始めると、「薬で体に負担がかからないか」「ホルモンバランスに影響しないか」といった不安を抱える方も少なくありません。
漢方では、血流を促して子宮の状態を整えたり、体質に合わせてホルモンの働きをサポートしたりする処方が活用されます。
妊活中は特に、体にやさしく続けられる方法を選ぶことが大切です。
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血流を促し子宮を温める処方
冷えや血行不良が気になる場合、瘀血(おけつ)に配慮した処方が選ばれることがあります。
その代表例として、桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)が挙げられます。
一方で、当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)は妊娠後の安胎薬としては使用されることがあるものの、妊活中の服用はNGとされています。
妊活期には、妊娠が判明した時点で中止が必要になる処方もあるため、服用にあたっては医師や薬剤師の管理下で進めることが重要です。

BMIで22以下の方は飲まないほうがよいでしょう。
ホルモン環境を整える漢方薬
妊活中は、排卵や月経周期に影響するホルモンバランスの乱れに悩む方も多いです。漢方では、ホルモンの分泌に関わる体の働きを間接的にサポートする処方が用いられます。
例えば、温経湯(ウンケイトウ)は、月経周期の乱れや黄体機能の低下がみられるケースで検討されることがあり、基礎体温の安定やホルモンの波を整える手助けになります。
体の状態を内側から整えることで、妊娠しやすいリズムをつくることが期待されます。
精子の質を高める漢方薬
妊活というと女性側の体調に注目されがちですが、精子の質も妊娠の可能性を左右する重要な要素です。
特に花粉症のシーズンは、アレルギー症状や体力の低下により、男性側のコンディションも乱れやすくなります。
そこで注目されるのが、補中益気湯(ホチュウエッキトウ)や八味地黄丸(ハチミジオウガン)といった処方です。
これらは、精子の濃度や運動率の改善に寄与する可能性が報告されており、体力や腎機能を支える漢方薬として、男性の妊活をサポートする目的で用いられることがあります。
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【閑話】西洋薬よりも漢方薬が妊活中の体にやさしい理由
妊活中は、ホルモン治療やアレルギー対策で複数の薬を併用する場面が少なくありません。西洋薬は単一成分で即効性がある反面、副作用や体質との相性が課題となることもあります。
一方、漢方薬は複数の生薬を組み合わせて作用するため、冷えやストレス、不定愁訴など妊活期にありがちな体質トラブルに、やさしく寄り添えるのが特長です。副作用の発現頻度が比較的少ないとされ、妊娠を意識した女性にも取り入れやすいといわれています。
さらに、当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)のように、安胎作用が報告されている処方もあり、動物実験で胎児への影響が少ないとする報告もあります。
ちょっと一息つきたいとき、「体にやさしい漢方」という選択肢を考えてみてもよいかもしれません。
出典:女性と漢方シリーズ~妊娠~③ 妊娠免疫と漢方 当帰芍薬散による安胎作用|漢方トゥデイ
花粉症以外にも妊活中に漢方が効果的な諸症状
妊活中はホルモンバランスが大きく変化するため、冷えやPMS(月経前症候群)、睡眠の質の低下など、花粉症以外にもさまざまな体調不良が起こりやすい時期です。
西洋医学では対処しきれない「なんとなく不調」に対して、漢方は体質や全身バランスを整えることで改善を目指せます。
ここでは妊活中によく見られる3つの不調と漢方的なアプローチをご紹介します。
冷え・むくみタイプ
手足の冷えや下腹部の重だるさが続く場合、体を温めながら巡りを整える処方が選択されることがあります。
ただし、当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)は前述したように妊活中の処方には適していないため、体質に応じて別の処方を検討する必要があります。
どの漢方が合うかは個々の体質や症状によって大きく異なるため、判断に迷う場合は専門家に相談しましょう。
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PMS・月経痛タイプ
月経前に現れる腹痛やイライラ、情緒の不安定さに悩む方には、桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)がよく使われます。
血の巡りを悪くする瘀血(おけつ)を改善し、ホルモン変動による不調をやわらげる働きが期待されています。
肩こりや肌荒れが気になる方にも適した処方です。
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ストレス・不眠タイプ
妊活中は、結果への不安やホルモン変化の影響で、睡眠の質が落ちやすくなります。
寝つきが悪い、夜中に目が覚めるといった状態が続く場合は、酸棗仁湯(サンソウニントウ)が使われることがあります。心身の緊張をやわらげて自律神経を整え、浅い眠りを改善する漢方薬です。
また、イライラや気分の落ち込みを感じやすい方にも役立ちます。
【FAQ】花粉症と妊活、漢方に関するよくある質問
花粉症を抱えながら妊活に取り組んでいると、さまざまな疑問が浮かび、不安を感じることもあるでしょう。
ネット上には真偽のわからない情報があふれており、何を参考にすべきか迷ってしまう方も少なくありません。
ここでは、花粉症と妊活、漢方に関するよくある疑問を整理しました。
アレルギー体質だと妊娠しにくいは嘘?
花粉症などのアレルギー体質があると「妊娠しにくいのでは?」と不安に感じる方もいますが、現在のところ、軽度のアレルギーが自然妊娠率を下げるという科学的な根拠は見つかっていません。
2019年に行われた英国の大規模調査(1万人超が対象)では、喘息やアレルギーの既往歴と、子どもの人数との間に有意な差は確認されませんでした。
花粉症や軽度のアレルギーのみで妊娠が妨げられることは考えにくく、むしろストレスや睡眠不足など、ほかの要因が影響する可能性のほうが高いとされています。
出典:Impact of allergic diseases on fertility|National Library of Medicine
アレルギー体質と流産は無関係?
軽症の花粉症だけを理由に流産リスクが上がるという明確な証拠は、現在のところ限られています。
ただし、重症喘息やコントロール不良のアレルギー性炎症を抱える場合には、流産率がやや高まったという報告もあります。
例えば、不妊や流産を繰り返している方を対象にした調査では、アレルギーをもつ人のほうが妊娠の経過に影響が出たというデータもあります。
出典:High prevalence of allergy in patients with infertility and recurrent pregnancy loss|ScienceDirect
くしゃみと着床は無関係?
胚移植後にくしゃみや咳をしても、子宮内圧が着床を妨げるほど高くなることはありません。
実際、不妊治療を専門とする医師の間でも、「くしゃみや排尿で胚がはがれることはない」という見解が一般的です。
移植直後のくしゃみが妊娠の支障になる心配はないといえるでしょう。
出典:Your Embryo Transfer Questions, Answered by IVF Experts|Illume Fertility
妊娠前の薬の影響はいつの服用から?
妊娠初期(生理開始から約4週末まで)は、「全か無かの時期」とされます。
この時期に薬などの影響を受けた場合、影響がなければ正常に発育し、逆にダメージが大きければ着床せず、あるいはごく早期に流産(化学流産)となることがあります。
つまり、「奇形として残るリスクは低い」とされる一方で、「無」=着床に至らなかったり、妊娠が継続できなかったりする可能性があるため、妊娠を望む人にとっては決して影響が小さいとはいえません。
このため、妊活中で妊娠の可能性がある時期には、不用意な服薬や市販薬の使用には慎重になることが望ましいでしょう。
出典:Critical Periods of Development|MotherToBaby
花粉症で悩む方、妊活を成功させたい方は「こうのとり」まで
妊活中の花粉症治療では、薬の制限により症状を我慢してしまう方が多く見られます。
しかし、体調不良が続くことで妊活そのものに悪影響を与える可能性もあるため、適切な対策が重要です。
妊活中の花粉症対策としては、妊娠中でも使用できるとされているアレグラ(ジェネリック含む)を推奨しています。症状に合わせて 1日1〜4錠まで調整できる 点も使いやすく、体調に合わせた柔軟な服用が可能です。
そのうえで、漢方薬なら体質に合わせた個別処方ができ、花粉症と妊活の両立を無理なく目指せます。西洋薬のように「すべて中止」ではなく、体調を見ながら漢方と西洋薬の併用相談もできるという点が、漢方の大きな強みといえるでしょう。
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