不妊治療の費用を親に相談する前に、夫婦で決めておきたいことと伝え方

不妊治療の費用について親に援助をお願いするかどうかは、夫婦だけで話すときでもお金の話が重なって切り出しにくいものです。そこに親が関わると、さらに言い出しにくくなることがあります。この記事では、親に連絡する前に夫婦で気持ちをそろえる方法、合意しておきたい項目、話す場面と手段、援助の条件の整理、断られたときの考え方、援助を受けたあとの関わり方を順に整理します。税金や制度は断定せず、確認の進め方にとどめます。
親に相談する前に、まず夫婦で立ち止まりたいこと
親に援助を頼むかどうかを考え始めると、「早く決めて動かなければ」と焦りやすくなります。けれど、最初の一歩は親に連絡することではありません。夫婦それぞれが自分の気持ちを確かめるところから始めると、あとの話し合いが進めやすくなります。ここでは、決めきれなくてもよいという前提と、気持ちの書き出し方をお伝えします。

相談するかどうかは、すぐに決めなくてよい
「相談する」か「しない」かの二択で考えると、どちらを選んでも気持ちが重くなりがちです。そこで、「今は決めない」という選択肢も最初から置いておきましょう。たとえば「今月は気持ちを整理する期間にして、来月の初めにもう一度話す」と日付だけ決めておくと、決めないこと自体が小さな計画になります。
決めない期間があっても、話し合いを後回しにしているわけではありません。気持ちと家計の状況を整えるための時間と考えてみてください。
頼りたい気持ちと頼りたくない気持ちを、それぞれ書き出す
夫婦それぞれが、別々にメモを書いてみましょう。話し合う前に書いておくと、相手の反応に引っ張られず、自分の考えを確かめられます。書く内容は次のような点です。
- 頼れたら助かると思うこと
- 頼ることに引っかかりを感じること
- 親との関係で気をつかっていること
- 親に知られたくないこと、知ってもらってもよいこと
書いたメモは、すぐに見せ合わなくても構いません。話し合う日に、一人ずつ順番に読み上げ、読んでいる間は相手が口を挟まずに聞く、というやり方が取り入れやすいでしょう。読み終わったら、まず「そう感じていたんだね」と一言返してから、次の話に進みます。意見を言い合うのは、その後で十分です。
実家との関係は夫婦それぞれ違うため、自分の親と相手の親とで気持ちが違っていて当然です。正解を探すより、違いを知ることを目的にしてください。話し合いの時間は30分ほどを目安に区切り、疲れたら続きを別の日に回すと、お金の話でも気持ちが張りつめにくくなります。
夫婦で合意しておきたい項目を整理する
親に話す前に、夫婦の考えを言葉にしてそろえておくと、親から質問されたときも慌てずに答えられます。ここでは、決めておきたい項目を一つずつ見ていき、最後に書き込める表にまとめます。実家との関わり方は夫婦で違うため、片方の親に頼ることへの気持ちも、お互いに聞き合ってください。
援助を受けたい範囲と、家計でまかなう範囲
最初に、親に頼りたい部分と、夫婦で負担したい部分を分けて考えます。「全部頼る」「全部自分たちで」と極端に決めなくても、一部だけお願いする形もあります。範囲がはっきりしていると、親に伝えるときも「この部分について相談したい」と具体的に話せるため、親も答えを考えやすくなります。
金額の考え方も、ここで話しておきたい点です。まとまった額をお願いするのか、必要なときに少しずつお願いするのか、上限や目安をどう置くのかを、夫婦で言葉にしておきます。具体的な数字は、そのときの状況に合わせて夫婦で決めてください。
援助なしで進める場合の目安を先に決めておく
親に相談する前に、援助がなかった場合の家計の線引きも決めておきましょう。この線引きがあると、断られたときや条件が合わなかったときにも、慌てずにそこへ戻れます。「援助がないと進められない」と思い込んでいると、親の返事に気持ちが左右されやすくなります。
目安は固定ではなく、状況に合わせて見直してよいものとして、夫婦で書き留めておくと安心です。費用の見通しや公的な支援について整理したいときは、治療費が続かないと感じたときの対策や制度の情報をまとめた、次の記事も参考になります。気になる場合は読んで確認してみてください。
親にどこまで状況を共有するか
援助をお願いするとき、治療の詳しい内容まで伝える必要があるかどうかは、夫婦それぞれの感じ方で変わります。「費用の相談だけしたい」「経過は伝えたくない」という気持ちも尊重してよいことです。反対に、ある程度話したほうが気持ちが楽になると感じる方もいます。
どこまで話すかは、夫婦で先にそろえておき、親に質問されたときの答え方も決めておくと迷いにくくなります。たとえば「そこは自分たちで決めたいので、今は話さないでおくね」という言い方をあらかじめ用意しておくと、返事に詰まりにくくなります。
意見が分かれたときは、結論を急がず保留にする
夫婦で意見が分かれることは、珍しくありません。片方が「頼りたい」、もう片方が「頼りたくない」ときは、どちらかが折れて決めるより、いったん保留にしてください。保留にするときは、「いつまで考えるか」「次に話す日はいつか」を決めておくと、先延ばしになりにくくなります。
相手の考えを変えようとするより、「なぜそう思うのか」を聞く時間をとってみましょう。理由を聞くだけでも、頼りたくない気持ちの背景にある不安が見えてくることがあります。
ここまでの項目を、書き込みやすい形にまとめたのが次の表です。印刷するか、ノートに写して使ってください。決めた内容の欄は、迷ったら空欄や「保留」のままで構いません。
項目 | 話し合うこと | 決めた内容を書く欄 |
|---|---|---|
援助をお願いしたい範囲 | どの費用について頼りたいか、頼りたくないか | |
金額の考え方 | まとまった額か、必要なときに少しずつか。上限や目安をどう置くか | |
援助なしの場合の家計の線引き | 家計から出せる範囲と、見直したい支出 | |
親に伝える情報の範囲 | 状況をどこまで話すか、話さないこと | |
どちらの親に誰が話すか | それぞれの親にはその子ども本人から話すか、二人で話すか | |
意見が割れたときの保留ルール | いつまで保留にして、いつ再度話すか |
親に話す場面と手段を、負担の少ない形で選ぶ
夫婦の考えがそろったら、次は親にどう話すかを考えます。同じ内容でも、話す時間帯や手段によって、受け取られ方が変わることがあります。ここでは、落ち着いて話せる条件の選び方、手段ごとの向き不向き、切り出しの例を整理します。
時間と場所を、落ち着いて話せる条件で決める
話す日は、相手がゆっくり聞ける時間を選びます。避けたほうがよいのは、次のような場面です。
- 仕事や家事で急いでいる時間帯
- 他の家族や来客がいる場
- お祝いごとや行事の席
夫婦のどちらかが疲れているときや、気持ちが落ち込んでいるときも、無理に当てないほうがよいでしょう。「今日は話せそう」と二人が思える日を選ぶのが基本です。
場所は、電話なら静かな部屋、対面なら周りの目が気にならない自宅や個室など、途中で話が途切れにくいところが向いています。食事中は、話の重さと場の雰囲気が合わないことがあるため、食後にお茶を飲みながらなど、少し落ち着いたタイミングを選ぶ方法もあります。
対面・電話・手紙やメッセージの向き不向き
手段にはそれぞれ特徴があります。夫婦の状況や、親との関係に合わせて選んでください。
- 対面:表情や声の調子が伝わりやすい一方、その場で返事を求められやすい
- 電話:距離が離れていても話せるが、相手の都合に合わせにくく、聞き手の表情が見えない
- 手紙やメッセージ:相手に考える時間を渡せるうえ、伝えたい内容を整えてから書ける。一方で、細かな気持ちが伝わりにくいことがある
対面や電話で話した場合も、あとから手紙やメッセージで要点を補う方法があります。口頭だと金額や条件の認識がずれやすいため、書き残しておくと、お互いに見直しやすくなります。
切り出しの一言と、伝える順番の例
最初から内容を全部話そうとしなくて構いません。まずは次のような短い言葉で、時間をもらうところから始めます。
- 「相談したいことがあるので、時間をもらえますか」
- 「大事な話があるから、今度ゆっくり話させてほしい」
本題に入ったら、次の順番で伝えると整理しやすくなります。
- 状況の共有(話してよい範囲で)
- 今の気持ち
- お願いしたいこと
- 返事は急がないこと
この順番に沿った例を、3つ挙げます。言いやすい形に直して使ってください。
- 「費用の面で悩んでいて、夫婦でたくさん話し合いました。できれば一部だけ力を貸してもらえたらと思っています。すぐに返事はいらないので、考えてもらえたらうれしいです」
- 「詳しい経過はまだ話せないのだけれど、費用のことで相談したいと思っています。頼ること自体、迷いました。無理のない範囲で、考えてもらえますか」
- 「援助がなくても進める計画は立てています。そのうえで、もし力を貸してもらえるなら、とても心強いです。断ってもらっても大丈夫なので、気楽に考えてください」
夫婦で一度声に出して練習すると、当日の緊張がやわらぎます。誰が主に話すか、もう一人はどこで補うかも、あらかじめ決めておくと安心です。
援助を受けるときの条件を、あらかじめ言葉にしておく
援助を受けることになったとき、あとから「こんなつもりではなかった」とすれ違うことがあります。お金のことは、親しい間柄ほど曖昧にしがちです。ここでは、気持ちのすれ違いを減らすために、条件を言葉にしておく視点を整理します。

お金の扱いを、あげる・貸すのどちらと捉えるか
まず確認したいのは、そのお金を「もらうもの」とするのか、「借りるもの」とするのかです。返す前提であれば、返す時期や方法、返せなくなりそうなときの相談の仕方も決めておくと安心です。親の考えと夫婦の考えが違っていないか、最初に言葉で確かめましょう。
使い道の範囲も、合わせて確認しておくと、あとで説明しやすくなります。「治療にかかる費用に使う」と決めるのか、「生活費の不足分にも使ってよい」とするのか、親と夫婦で同じイメージを持てているかが大切です。
口出しや報告の頻度について、お願いしたいことを決める
援助を受けると、親が状況を気にかけてくれる場面が増えるかもしれません。その気持ちを大切にしつつも、夫婦にとって負担にならない形を考えておきたいところです。決めておきたい点には次のようなものがあります。
- 報告はどのくらいの頻度で、どんな内容にするか
- 生活への意見をどこまで聞くか
- 聞かれたくないことがあるときの伝え方
お願いしたいことは、「こうしてもらえると助かります」と、してほしいことの形で伝えると角が立ちにくくなります。「聞かないでほしい」より「こちらから話すまで待ってもらえると助かります」のほうが、受け取りやすい言い方です。
制度面は断定せず、確認先を決めておく
親からの金銭の援助には、税金や公的な制度が関わる場合があります。ただし、取り扱いは状況によって異なるため、この記事では断定しません。気になるときは、税務署などの公的な窓口や、必要に応じて税理士などの専門家に問い合わせる流れで確認してみてください。
治療費の側の制度については、不妊治療が令和4年4月から保険適用になっていることが、公的機関の情報で確認できます。
ただし、実際にどの治療がどの範囲で対象になるかは、通っている医療機関や公式情報で確かめる必要があります。費用の全体像がわからないまま金額を決めると、親への説明もしにくくなるため、先に夫婦で確認しておくと安心です。
また、不妊症や不育症の相談については、各都道府県などに設置された「性と健康の相談センター」で、医学的・専門的な相談や経験者によるピアサポートなどの支援が行われているとされています。開設時間などは地域によって異なるため、お住まいの地域の情報を確認してください。
問い合わせの前に、確認したい点をメモにまとめておくと伝えやすくなります。たとえば、「援助を受ける予定の時期と、おおよその規模」「お金の性質(贈与か貸与か)」「使い道」などです。確認した結果は、日付と一緒に残しておくと、あとで夫婦や親と話すときにも役立ちます。
断られたとき、条件が合わないときの選び方
相談しても、親が援助できない場合や、条件が合わない場合があります。そのとき気持ちが沈むのは、自然なことです。ここでは、落ち込みすぎずに次へ進むための、具体的な行動を整理します。
返事を急がず、持ち帰ってもらう
相談の場では、返事をその場で求めないことが大切です。「考えてもらってかまいません」「無理のない範囲で教えてください」と伝えておくと、親も気持ちを整理する時間が持てます。夫婦のほうも、その場の反応で一喜一憂せず、日を置いて受け止められます。
返事がなかなか来なくても、催促は急がないようにしましょう。「来週のこのくらいに、一度こちらから連絡してみる」と日を決めておくと、待っている間の落ち着かなさが少し和らぎます。
援助なしで進める場合の計画に切り替える
断られたときは、事前に決めた「援助なしの場合の家計の線引き」に戻ります。このときに行いたい行動は次のとおりです。
- 夫婦で、今の家計の状況を一度見直す
- 決めておいた目安を、今の気持ちで調整する
- 必要なら、公的な情報や窓口で確認する
断られた理由を深追いしたり、親の気持ちを推測したりしないようにしましょう。それぞれの事情があると受け止めて、夫婦の計画に意識を戻すほうが、気持ちを保ちやすくなります。
関係を保つための一言を添える
結果にかかわらず、時間をとって聞いてもらったことへの感謝は伝えておきたいところです。次のような短い言葉で構いません。
- 「話を聞いてくれてありがとう。それだけで気持ちが楽になりました」
- 「また何かあったら、相談させてもらうね」
気持ちが落ち着かないときは、夫婦で話したり、信頼できる友人や相談先に話を聞いてもらったりして、一人で抱えこまないようにしてください。
援助を受けたあとの関わり方を、無理のない形で決める
援助を受けたあとも、親との関わりは続きます。感謝の気持ちがあっても、関わり方が負担になることもあります。ここでは、日常で試せる小さな工夫を紹介します。
報告の頻度と手段を、夫婦と親で確認する
報告の仕方は、あらかじめ決めておくと気持ちが楽になりやすいです。たとえば、「聞かれたら答える」「節目にまとめて伝える」「月に一度、短いメッセージで近況を送る」など、いくつかの形があります。電話が負担ならメッセージにするなど、手段も合わせて確認しましょう。
共有する内容の範囲は、夫婦で決めてよいものです。「結果の詳細までは伝えない」と決めても構いません。決めた範囲は夫婦で同じにしておくと、どちらかが言いすぎてしまうことを防げます。
感謝を伝える方法を、負担にならない範囲で
感謝は、大きな形でなくて構いません。短い連絡や手紙、近況を伝える一言でも十分です。「何かお返しをしなければ」と思うと、かえって負担になります。続けられる形を選び、気持ちが向いたときに伝える程度で十分です。
負担に感じたときは、早めに夫婦で話す
親の関わりを重く感じたときは、一人で我慢せず、まず夫婦で話してください。「何が負担なのか」「どうなれば楽になるか」を、責め合いにならないように整理します。そのうえで、必要なら条件の見直しを親に相談しましょう。「ありがたいと思っているからこそ、お願いしたいことがあります」と始めると、気持ちが伝わりやすくなります。
まとめ
親に相談する前に、夫婦それぞれの気持ちを書き出し、頼る範囲や共有する情報の範囲をそろえておくと、話し合いが進めやすくなります。伝える場面や手段は、落ち着いて聞いてもらえる条件を選び、返事を急がない形にしましょう。援助を受けるなら、お金の性質や報告の頻度などの条件を言葉にしておくと、すれ違いを減らせます。断られた場合の計画も用意しておけば、気持ちの負担が軽くなります。税金や公的な制度は状況によって異なるため、公式情報や窓口で確認してください。日々の気持ちの整理や生活面で話を聞いてほしいときは、漢方薬房こうのとりにも気軽にご相談ください。











